2019.01.12
先日久しぶりにあるバイオリニストをテレビで見ました。何気なく登場してさっとヴァイオリンを構えると、その姿は異様なほど歪み、首や胸、肩の形や顔まで瞬間的に見事に変形しました。以前の弾き姿と比べてかなりの変化を遂げています。それはいい音を出すために、という目的のためだけに日々の練習の中から生まれたもので、見た目の美しさとは少し違いましたが出てくる音は素晴らしかったです。
長年同じ作業を続けていると身体がその作業に適した形に変形します。演奏家も日々同じ姿勢を保つうちにその人の演奏しやすい決まった形にだんだん変形します。
ピアニストももちろん例外ではありません。譜面を一生懸命見上げているとどうしても猫背になり首と顎が前に出てくるので気を付けているというピアニストの話も聞いたことがあります。実際に一定の割合で、指の細かい動きやソフトな音作りのために、背中が曲がったピアニストを見かけます。直そうとして弾き方を変えた方もいますが、以前のように音楽に没入できるところにまで至っていないようで、フォームを変える難しさを感じます。
ピアニストのグレン・グールドは弾く姿勢が独特で有名です。タッチのわずかな狂いも許さないために、彼専用の低い椅子に座ります。指と耳と目がものすごく鍵盤と近距離となるベストなカタチ、今はもう彼のスタイルとして定着していますが、当時は議論を巻き起こしました。今では、出てくる音楽の素晴らしさに、もうそんな彼の見た目など気にする人はほとんどいません。
他にも内田光子や小澤征爾も独特なフォームですが、演奏の素晴らしさに忘れてしまいます。
さて、巨匠たちのフォームは良いとして、子供たちは基本に沿ったきれいな姿勢や指のフォームで弾いてほしいと思い、レッスンでは厳しく見ています。ピアノのレッスンをしていて一番大変なのが指のフォームの変形です。子供たちはまだ指の成長の途中。変な癖がついてしまうともう簡単にはとれませんし、癖で弾いたほうがやりやすくなってしまい、どんどん変形していきます。
① マムシ指…親指の付け根の関節が内側にもぐってしまう。手全体が開かなくなる。余計な力が入る。
② ぺちゃんこ指…ホロヴィッツがこれなのですが、我々が陥ると汚い音になりがち。大きい音が出やすいので指が弱い方が好む。ある生徒さんを3年くらいかかって直したことがある。
③ 手首下がり…ぶら下がるようにして弾く。これも大きい音が出やすいので陥りがちだが、素早い動きに対応できない。第3関節が弱いとなりがち。
そうそう、転勤していった生徒さんから年賀状が届きました。高校受験の年なのに意欲的に合唱の伴奏を引き受けて賞を取ったそうです。今もピアノを好きでいてくれて嬉しいです。彼も小さい時はよく猫背になりそうになっていましたが、姿勢よく美しいフォームで大人になるまでピアノを続けてほしいです。
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