2016.06.19
このところ、何人かの生徒さんにソネチネアルバムに取り組んでいただいております。
良い機会ですので、ここでソナチネについて書いておきたいと思います。
『ソナチネアルバム』
ここにはF.クーラウ(1786独-1832デンマーク)、M.クレメンティ(1752伊-1832英)の小規模なソナタ、つまりソナチネを始めハイドン・モーツァルト・ベートーヴェン等古典派の巨匠の作品から比較的弾きやすい曲がたくさん収められています。いずれもシンプルで愛らしい小曲たち、超難度のテクニックは使わないこともあり古典派への入り口として今でも多くの方々に使われているテキストではないでしょうか。
おっと、今さらりと
古典派(クラシック)と書いてしまいましたが
今日はその古典派をとは何時ぞや、からご説明をしたいと思います。
時代は18世紀。なんとも大雑把な区切り方ですが
「J.S.バッハが死んでからL.v.ベートヴェンが死ぬまで」とイメージしていただいても
差し支えないかと思います。
大バッハに代表されるバロック時代と、ベートーヴェンの活躍した古典派。
この違いは何でしょう。
まず彼ら二人の肖像画を思い浮かべていただきましょう。
髪型が違いますね。
くるくる巻き毛の鬘をかぶったバッハと、ライオンのごとくみだれ髪のベートーヴェン。
以外とこれが重要でして、バッハの時代は鬘を被るのが宮廷でのマナーだったというのです。
大変ですね。
鬘をかぶって、お白粉をはたいて、もちろん衣装も重々しく
宮殿のサロンで並み居る貴族を前に演奏をする。
かたやベートーヴェン。
髪も衣服も随分動きやすそうですね。
もっとも髪が乱れているのは彼がくせ毛で剛毛なうえ
身なりには注意しなかったせいかもしれませんが。
実は彼が19の歳、
1789年7月14日にフランスでは歴史を揺るがす大事件が起こっています。
フランス革命。
社会が貴族中心から市民中心へと大きく変わろうとしていた時期です。
当然その流れは社会生活をも大きく変えました。
音楽は貴族のサロンから市民の劇場へと。
それは貴族の教養からブルジョアの趣味へと。
そして、音楽家もまた
貴族お抱えの召使から、自立した表現者となっていったわけです。
もはや鬘は必要なくなりました。
(続く)