2016.05.02
もう一月まえになるでしょうか。
春の瀬戸内海、穏やかな内海に浮かぶ直島に行きました。
ちょうど桜の季節です。
直島は近年アートの島として名高く
折しも瀬戸内芸術祭のシーズンだったこともあり、港には内外からの観光客が詰め掛けていました。そんな観る気満々のお客様たちを横目に、島の時間を緩やかに過ごさせていただきました。いや体調悪かっただけなんですが、、、。
海辺でスケッチしたり
銭湯でぼんやりしたり
対岸に沈む夕日を眺めたり
地元のご夫婦のやっている居酒屋で盛り上がったり(体調悪いのに)
で、せっかくなのでアートも少しばかり見てきたのですが
中でも本村、家プロジェクトの「南寺(ジェームス・タレル/安藤忠雄)」の体験は忘れられません。
そこでは真の暗闇の中に入るのですが
そこから徐々に自分の身体、感性が目覚めていく感覚は衝撃的でした。
見えないからこそ、見えることがわかる。
とでも言いましょうか。
さて、私はチェンバロという楽器を弾きます。
一般的にチェンバロの音色は現代のピアノと較べると弱いと言われています。
確かに広いホールでチェンバロを聞くと最初は頼りなく聞こえる時もあります。
ところが演奏会を聴き進むうちに
どんどん楽器の音が大きくなっていくように感じる時があるのです。
細部まで手に取るように感じ取れる、
曲や奏者によってはどんな楽器よりダイナミックだと感じる時さえあります。
おそらく、静かなホールで音を追ううちに
聴覚が開いていく、鋭敏になっていくのでは無いでしょうか。
もしかして私たちは
聞こえないのではなく、聴けてないだけなのかも。
意識を研ぎ澄ませば
見えなかったものが見え、聞こえなかったものが聞こえるのかも。
そんな事を考えた
直島での面白い体験でした。