2016.04.08
興味深い本を読みました。
菅野恵理子著
『ハーバード大学は「音楽」で人を育てる』
副題は「21世紀の教養を創るアメリカのリベラル・アーツ教育」
となっています。
リベラル・アーツは日本語では「教養」と訳されますが
語源を辿るともう少し奥行きのある意味が見えてきます。
もとはラテン語の「Artes liberales(自由人のための諸技芸)」に由来し
これは自由市民が知性を磨いて精神を高めるための技を指したようです。
つまり
人が人たるには知性と徳が不可欠。それを会得するための修練をまとめたもの、
それがリベラル・アーツ、と言えましょうか。
このリベラル・アーツ、大学では教養学部で学ばれるのですが
ご存知の通り、近年日本の大学ではこれを軽んじる傾向が強まり、
それでは真の教養人、ひいては世界を牽引するような人物や研究はできなくなるのではと懸念されています。
実は音楽も歴史的にリベラル・アーツの最も主要な科目の一つなのですが
日本ではあまり、そのようには認識されていないように感じ、残念に思っていたところ上記の著作を見つけたわけです。
菅野氏は主にアメリカの大学の現状を調査し
彼の国でいかに「リベラル・アーツとしての音楽」が教育に生かされているか。
また、そこで教育を受けた学生が
いかにそれを社会に還元しているかを紹介しています。
私にとって音楽はまさに「扉」です。
音楽を学ぶことで、歴史や社会、文化の多様性を学びました。
また音楽を学ぶことで、地道な作業の価値や、心に寄り添う意味を実感しました。それはまさにリベラル・アーツでした。
その体験に感謝するとともに
そこで学んだものを、再び生徒さんたちに返していきたいと思っています。