2016.02.15
春は名のみぞ 風の寒さが身にしみる二月のとある日
兵庫県立美術館へ「ジョルジョ・モランディ〜終わりなき変奏〜」展を見に行きました。
去年の暮れにチラシを見て以来、ずっと気になっていた絵画展です。
彼の作品はどこかで数点見たはず。その時から惹かれていた画家です。
淡いパステル調の茶やグレー、ベージュ、その画面の中にコップや水差しが並びます。
どこまでも静かで、中庸で、それなのに忘れがたい存在感を示す静物画。
作品と対峙した時の立ち去りがたい充足感。
こんな静物画は他にはありません。
その謎を知りたいと思いました。
美術展で知ったのは
モランディが生涯、同じモティーフで何枚も何枚も静物画を描き続けたということ。
描かれる道具はほんの数点のコップや水差し、小瓶たち。
使われる色も素人眼にはほとんど同じように見える数種類。
彼は、それらの位置を微妙に動かし、並べ変え、幾度も幾度も描きつづけたと。
同行の友人の一言が的を得ていました。
「間違い探しみたい、、、」
確かに。
でも、そんな間違い探しのような図柄を丁寧に見比べていくと
やっぱり全然違う。
背景の空間を広くとるか、画面中央にみっちりとオブジェを並べるか
そんなことでも印象が がらりと変わるのです。
凄いな、と思いました。
毎日、格別代わり映えのしない同じ生活を繰り返しながら
その中でより優れた物を目指して、試行錯誤しながら微妙な変化を追い求めていく。
惰性とは対極にある、静かな挑戦心。
本当に強い精神をもった人にしか描けない絵だと思いました。
実は楽器の習得にも、この強い精神が必要だと感じています。
私たちは一曲を本番にかけるまでに何十回、何百回と繰り返し練習をし続けます。
でも、ただ繰り返すだけでは、目指すものには近づけない。
精神を目覚めさせ、どこに問題があり、どこを改善すればよいか
常に自問自答が必要なのに、ついつい惰性に流れてしまう。
自戒を込めて
モランディさんの絵葉書をピアノの上に飾ってみました。