2016.10.09
見終えた時、なんとも言えない豊かな思いに心が満たされていました。
「シーモアさんと、大人のための人生入門(Seymour an introduction)」
今、公開中のドキュメンタリー映画です。
シーモア・バーンスタインは1927年生まれ、今年89歳になる米国のピアノ教師。彼はコンサートピアニストとしての活躍を50歳にして引退、その後の人生をピアノ教育と作曲とに捧げてきました。その背景にあったのは舞台恐怖症と商業主義への懐疑。
ニューヨークの小さなアパルトマンでの生活
レッスンの様子
友人たちとの会話
思い出話
楽器の選定やサロンコンサートの場面
パッチワーク的に切り取られる其々の場面を言葉でお伝えするのは簡単ではありません。
でも、全編に流れる彼の演奏!
ああ、こんな音を奏でるピアニストがここにも居たのだと。
そして、その音楽と重なり合う彼の語り口調。
音楽と人生の共鳴しあう姿がそこにありました。
印象的な場面があります。
ラフマニノフのコンチェルトのレッスンを受ける若いピアニスト。
彼の自然体から溢れ出す Passionに引き込まれました。
「良いだろう?」とばかりに微笑を浮かべこちらに眼差しを向けるシーモア。
シーモアがオーケストラパートを引いた瞬間、
私には確かにオーケストラの音色が聞こえました。
二人が作り出す音楽に心が震えました。
その後、インタビューに答える若いピアニスト
「僕には音楽が人生そのものなんです。」
音楽と人生は切り離せない。
昨日見たばかりの映画なのに具体的に語るのが難しいのは
言葉以上に彼の音楽が、深く直接に心に届いたからなのでしょう。
偉大な音楽家のそばでは説明はいりません。
同じ空間で、呼吸を合わせ、視線を交わすだけでよい。
それだけで自分の閉じこもっていた殻は溶け落ち、世界と豊かに繋がり始めます。