私の好きな曲⑧ エステ荘の噴水 「Liszt Les Jeux d'eaux a la Villa d'Este」
2014.04.07
「Liszt Les Jeux d'eaux a la Villa d'Este」
コマーシャルの音楽のワンフレーズが耳について離れなくなるような時がありませんか?
私は先日ある感動的な音楽が頭の中に聞こえてきました。 最初、何の曲か思い出せませんでしたがしばらくしてリスト作曲のエステ荘の噴水の218小節目からの部分だと分かりました。何年か前に好きで弾いていた曲が急に思い出されたようでした。
この曲は晩年の作品。イタリアのティヴォリにあるエステ家の別荘にある壮大な噴水の様子が曲になっています。リストの後期の作品の中で最もよく演奏される、きらめく美しい曲です。とは言っても単に噴水を描写したものではなく、彼のそれまでの人生や晩年の彼の心の中を通り過ぎたものの印象を音にしたものとなっています。想いが大きな波になって押し寄せてくるような音楽です。
若い頃は信じられないほどの超絶技巧の演奏で一世を風靡し、美しい容姿で多くの女性と浮き名を流したリスト。しかし演奏活動を退いてからは後進の指導と聖職者の道へ入ります。最晩年の孤独な彼の作風は内面に向かっていて宗教的なものが多く、この曲の半ばには「私が差し出した水は人の中で湧き出でる泉となり、永遠の生命となるであろう」というヨハネ福音書からの引用の文章が書いてあります。
喜びも悲しみも全て人生を形作った大切な思い出。私は懸命に生きてきた。これがわたしの一生だ! そういう風に私には聞こえます。
自分の一生を振り返り、この別荘でどんな想いで作曲したのでしょうか。
リストは噴水を見ながら何時間も立ちつくしていたといわれます。
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