《ゴイェスカス》第4曲『嘆き、またはマハと夜鳴きうぐいす』
2023.04.30
夜中にあまりにも明るくてふと目が覚めると、まだ午前2時半。ベランダの鉢植えの影が床にくっきりと影を落としています。
そうか、と思いカーテンを開けると、まん丸の月がこうこうと輝き、昼間とは違う神秘的な色で樹々が光っています。
スペインの作曲家グラナドス(1867年〜1916年)作曲の《ゴイェスカス》第4曲『嘆き、またはマハと夜鳴きうぐいす』は、月明かりの中、好きな男性を想いながら歌う女性の姿を描いたピアノ作品です。
《ゴイェスカス》とは“ゴヤ風の”という意味。グラナドスは、同じくスペイン出身の画家ゴヤの絵にインスパイアされて作曲しました。グラナドスは『スペインのショパン』と呼ばれるほどの詩的な作曲家で、この曲も美しい月夜に照らし出される美しい女性、そしてその胸の高鳴りや切なさを幻想的な風景と共に描ききっています。
夜鳴きうぐいすとはナイチンゲールで、クラシック音楽によく登場します。死を暗示する不吉な鳥とも言われます。
ヨーロッパで大成功をおさめたこの曲集は、オペラに編曲され、アメリカのメトロポリタン歌劇場でオペラ『ゴイェスカス』として初演されます。グラナドス夫妻もそれに臨席しますが、帰りの船が爆撃され、二人は命を落とします。
波にのまれていくグラナドス夫妻を想像すると、そこにナイチンゲールの鳴き声が切なく重なります。『嘆き、またはマハと夜鳴きうぐいす』のエンディングにはナイチンゲールの鳴き声を模した音形があらわれます。その音色は、まるでそうなることを予感していたかのように悲しくも美しく響きます。
熊本市東区健軍
HEART PIANO ハートピアノ教室