2022.12.11
コスパ(コストパフォーマンス)タイパ(タイムパフォーマンス:時間の有効活用)が高いことが最優先の現代。
演奏時間が長いクラシック音楽や、仕上げるまでの労力と時間が半端ないピアノの練習はその対極かもしれません。
タイパ優先の曲の聴き方。例えば演奏時間の長いオペラは歌を聴かず歌詞の字幕だけ見ながら早送り。あらすじだけは何かで読んで把握して、音楽はダイジェスト版で時短して情報収集。交響曲なども、ダイジェストでたくさんの曲が入っているCDはコスパタイパの両面で優れています。クラシック以外でも、全部観なくても済む短縮版の映画もあるとか。インスタグラムではその動画を見るかどうかを、人は最初の2秒で判断しているという忙しさです。
タイパすることでたくさんの知識を収集することができますが、そこには感動の取りこぼしも…。
例えばベートーヴェン第9のハイライトは、有名な合唱が入っている第4楽章を4分の1過ぎたあたり、行進曲風にと書かれたところから始まります。聴きなじみのあるメロディーラインはすぐに現れ、エンディングに向けての盛り上がりも十分味わえます。
ただ、その前には実に50分以上にわたる第1,2,3楽章とカットされた第4楽章冒頭部分があります。
この交響曲をすべてを聴くには、長い長い苦難との戦いという道のりを経て、わずかに差し込む温かい救いの光を希求しながら運命の十字架を背負って進んでいかなければなりません。
それを経て第4楽章へなだれ込むと、激しいオーケストラの響きと共に合唱団が熱気を発して立ち上がり、バリトン歌手が「違う!こんな音楽ではない!」と高らかに歌います。第3楽章までをどんでん返しで全否定することで、更に音楽は巨大化しながら歓喜の大合唱へと突き進んでいくのです。それらの感動すべてを味わうことはダイジェスト版では不可能です。
サッカーの試合の結果は「ニュースのハイライトでいいかな~。」とか、ロボコンレースは「最後の走らすとこだけ見ればいいかな~。」とかフトドキなことをついつい言ってしまいがちなわたくしですが、音楽と同じでその過程の価値には代えられませんね。
熊本市東区健軍
HEART PIANO ハートピアノ教室熊本