2021.07.14
汗が飛び散るのは高校球児だけではありません。ステージ上もライトが当たるので結構暑く、いつかは聴きに行ったピアノリサイタルで夏でもないのにクーラーがかかっていて驚きました。
理由はライトの暑さ&ピアニストが汗っかきでらっしゃるからだ、ということは演奏が始まってから分かりました。とても素晴らしかったショパン作曲の24の前奏曲(24曲の1~5分の短い曲が次々と演奏される)の演奏!しかしその熱演は一曲一曲汗をぬぐいながらの汗との戦いでもありました。全くもって失礼なことに、演奏よりそちらの方にどうしても気が散ってしまうわたくしなのでした。
ステージ上の汗と言えばやっぱりロシアのピアニスト、デニス・マツーエフさん。チャイコフスキーのピアノ協奏曲では、もう演奏開始からすぐに大きな身体から汗がしたたり始めます。鍵盤に汗がぽたっと落ちたら指がすべらないかしら、といらぬお節介です。
しかしよく見ているとオケはあまり汗をかかない気がします。指揮者は人によって大汗かく人と全然大丈夫な人と。弦楽器パートはずっと弾いている割に汗はなく、管楽器もソロが多くプレッシャーが大きい割に汗はあまり見かけない気がします。パーカッションもほとんどかかないようですが、ラヴェルのボレロ(スネアドラムが曲の最初から最後まで同じリズムを打ち続ける)では冷や汗はかかれているのでしょうか…。
さて、暑い時はいっそ自分もアツイ音楽を演奏して爆裂しましょう。
おすすめは《ベートーヴェン交響曲(リストによるピアノ編曲版)》です。まさに暑い暑いベートーヴェンの音楽を、更に暑く暑くピアノに写し取った全曲版です。楽器を演奏する楽しさというのは、自分の指で音楽を目(耳)の前に再現するところにあります。
ピアノで弾けばあの第五交響曲(運命)の出だしだって思いのまま。ベーム風だってフルトベングラー風だって、好きにできます。オーケストラを聴くだけでは味わえない感覚を、臨場感とともに自らが作り出すことができます。10本の指がオーケストラ、そして自分は指揮者。楽譜には実際オケで使用する楽器が書いてあるので、それぞれの音色を想像しながらヴァイオリニストになったりフルーティストになったり一人何十役です。
CDで聞き慣れた曲がすべて生でよみがえる感動もさることながら、ピアノ版の楽譜を見ていくと和声の移り変わりがよく分かり、なるほどこういう風に作ってあるのか、ここでこんな転調をできるなんて天才にしかできない、などなど様々な発見もすることができます。
梅雨明けして外はギラギラの夏の日差しです。汗もだらだら出てきます。「もう暑くていや、セミがうるさい。」と夏の間中文句を言うくせに、いざ秋になってみるとその寂しさに「もう少し夏を愛してあげればよかった。」と毎年後悔…。今年は汗とともに、夏の強い生命力をもっと受け止めながら過ごしたいです。
熊本市東区健軍 HEART PIANO ハートピアノ教室