2019年2月。水仙の花が咲き、春の気配が漂う町です。子供たちの遊ぶ声が遠くに聞こえます。ふと、どこからかピアノの音がしてきます。お花屋さんから流れているようですが…。
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私は小さな花屋を営んでいます。仕事中はクラシックのピアノ音楽を流しています。モーツァルトなんかは花にもいいかなと思って。詳しくはないんですけど。ピアノが好きで小さいころ習いましたが、男の子がピアノ弾く時代ではなかったし、どうもセンスがないようでやめてしまいました。ピアノを弾くより、花束を美しく作るほうが私には合っているような気がします。
もう一度ピアノを弾いてみたいと思う時もありますが、花屋はけっこう重労働で指先はボロボロ。朝早いし夜も意外と遅く、練習時間もないので無理かなとあきらめています。
そんな日々の中、晴れた日にバラやフリージアを買いに来られる女性のお客さんの事がちょっと楽しみです。ご自宅や音楽ホールへの花束依頼もあるので、その時は私も腕を振るいます。
数年前にはご自宅用に「赤いチューリップだけで90本の花束」というご予約いただきまして、その日は私も朝早くから仕入れに気合を入れました。かなり重くなりますのでご自宅へ配達させていただきました。それはそれはとても喜んでいただきました。
それからも定期的に花束のご注文をいただきましたが、送り先はご自宅から病院になり、しばらくしてついにご注文がなくなりました。
それ以来彼女はご来店されなくなりました。
今店に流れているのはブラームスのop.118-2。なんだかいつもより寂しく響きます。なぜか今の気持ちにぴったりで、自分でも弾いてみたいな…とちょっとだけ思っています。
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2月のある日の白昼夢です。
※白昼夢はフィクションです
HEART PIANO ハートピアノ教室
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