2018.04.07
HEART「まず善雄さんに14番嬰ヘ短調プレリュードを弾いていただきましょう。」
♪~~~善雄さんの演奏~~~♪
H「14番嬰ヘ短調プレリュードの主題は次に控えるフーガの主題(テーマ)の後半♯ドシラ♯ソ♯ファを使って書かれています。分かりますか。」
明夫くん「???ハート先生、どこのことかいっちょん分からんです。」
H「よ~く見てみてください。1音目が♯ド、4音目がシ、8音目がラ、12音目が♯ソ、16音目が♯ファになっているでしょう。対になっている嬰ヘ短調フーガの3,4小節目に♯ドシラ♯ソ♯ファの音形が出てくるんです。フーガは後日解説しますね。」
明「あっ、ほんとだ。パズルみたいですね。」
H「三声の曲ですが、ほとんどが二声で書かれているのでわりと弾きやすいですね。」
善雄さん「はい。私は工務店で建築士をしていました。若いころから趣味でピアノを弾いています。バッハが好きだったのですが退職してからはじっくり取り組めるのでよく弾いています。バッハの面白いところは楽譜を見ているだけで楽しいところですね。仕事とちょっと似ているような気がして。このプレリュードだと、まず出だしの主題(テーマ)の形が次はどこに出てくるかを見つけるのが楽しいです。職業柄、動線とか常に気になりますからね(笑)。単純に調が変わっているだけなら見つけやすいですが、時々何だか上下逆になったような…。」
H「“反行主題”ですね。音符を鏡に映したように上下が逆になっているんですよね。」
明「なんだ、くそばばあの反抗じゃなかったですかね。」(笑)
H「他にも終わりから逆に始まるのは“逆行主題”、両方やっているのは“逆反行主題”といいます。J.S.バッハの作品では、“順行”(そのままの並び方)と“反行”がよく用いられています。私が大好きな蟹のカノンは“逆行”を使っています。」
善「そうそう。そんな感じで面白いんですよ。反行形は確か14小節目の終わりから出てますよね。」
H「そうロ短調ですね。そして追いかけるように15小節の終わりから更にイ長調で反行形が出てきます。」
明「たーだ書いてあるとじゃなかとですね~。」
H「そして20小節目ではソプラノとバスの声部で3度ずらして主題を重ねています。“主題の二重化”といって曲の盛り上がりを演出し、奥行きを与えます。」
善「あ~それは気が付きませんでした。」
明「はい!そこから先は分かりますよ。22小節からコーダですよね。22小節ではアルトに主題が、23小節にはバスに主題が出てきて23小節でチャンチャンチャーン。」
H「カデンツですね♪」
明「アルトとバスが、さよなら~さよなら~って言いよらす感じですね。」
善「ほんとにそうですね。この曲は軽快なんですが、ほんのり淋しい感じも気に入ってます。淋しいピエロが、夕暮れのがらんとした家具のない広い部屋で踊っているような…。」
H「次回は、17番変イ長調プレリュードを芳美さんに弾いていただきます。明夫くんの好きそうな癒しの調、変イ長調ですよ。」
*「当たってくだけて平均律クラヴィーア曲集」はフィクションです。
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