2017.08.05
明夫くん「HEART先生どうしたら13小節目からと26小節目からが速く弾けるようになりますか?特に左手が動かんとです。」
HEART「ここは1本の手で2人分つまり二声を弾くこと、そして特に左手はドを小指で押さえたまま他の指を動かさないといけないので難しいんです。時間がたっぷりあって一日何時間も弾けるんだったらきっと運動神経抜群の明夫くんだったら何回も練習すれば必ず弾けるようになりますよ。でもお仕事もあることだし、あまり速く弾くことばかりにとらわれないで、少し回り道かもしれないけど今はとにかくそのフレーズの“音楽”を感じて表現することに集中してみてください。音楽的に弾くことに集中すると、それに勝るものはなくなっていきます。美香さんの演奏がそのお手本になると思います。それと平行してこんな感じで指を思った形に動かす練習も役に立ちます。(弾きながらやって見せる)がむしゃらにやるより必ずきれいに弾けるようになります。どうしても指を鍛えたかったらバッハを離れて別のやり方もあります。また別の機会にご紹介しますね。」
明「美香さんの演奏はどうしてあんなに優雅なんですか?」
H「“テーマ”の扱いが丁寧です。アーティキュレーションの付け方を工夫されています。それに、リズムをよく感じています。8分の9拍子だから3拍子が三つ分。音楽には強拍と弱拍とあってそれによって流れが出てくるの。」
明「おい、金出せ。の脅迫じゃなかったですかね。ははは。」
H「またバッハの“テーマ”の作り方が、後半20小節目からの左手(ニ短調)、22小節目からの右手(イ短調)は共に“テーマ”の最後の部分が最初のものと比べるとカットされています。このように“テーマ”は少しずつ形を変えることがありますが、この曲の場合切り取られたことによって終盤をたたみかけて曲を盛り上げる印象を与えます。もう一度美香さんの演奏を聴いてみましょう。」
♪~~~美香さんの演奏~~~♪
明「あ、今“テーマ”の話だったばってん、もしかして左手にも工夫をされとるでしょ。」
美香さん「はい。出だしの4拍目からのラソラソラソのところはリズム感をベースに弾き方を変えています。」
H「本当に素晴らしいです。このとらえ方、指の動き以上に音楽自体の表現に気を配る姿勢は実は明夫くんが悩んでいるあの左手の難しいところも解決してくれる鍵があります。明夫くん、よく左手を聴けましたね。」
明「はい、3塁スタンドからも聴かないといけんだったですよね。」
H「激しい弾き方も、ゆっくりと味わう弾き方もどちらもバッハです。だから時々違うやり方を試すのもお勧めです。」
美「明夫さんの弾き方は私と違うけど、とても好きです。迫ってくるバッハにすごくあこがれます。でも、あのテンポだと実は私も左手が弾けないんです。」
明「技術面からも、表現の面からもテンポ設定は難しかですね。」
美「私もそう思います。美しく上品で、憂いと激しさを兼ね備えた素敵な曲なので指の動きのことばかりにとらわれずにいろんなテンポで挑戦してみたいです。」
H「次回は中級者編で14番嬰ヘ短調プレリュードを善雄さんに弾いていただきます。明夫くんはイ短調を更に研究しつつ、次回の曲の楽譜をながめて“テーマ”の場所を探しておいてくださいね。」
*「当たってくだけて平均律クラヴィーア曲集」はフィクションです。
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