2017.08.27
モーレツな暑さの熊本です。
こんな時はさわやかなモーツァルトのコンチェルトで涼みましょう。短い人生を駆け抜けたモーツァルトの珠玉のピアノ協奏曲たち。若いピアニストの元気いっぱいの演奏もいいですが、やはり熟練のいい感じで力の抜けた演奏をお手本に弾いてみます。
K.466ニ短調。第1楽章にテレサ・テンの曲と同じフレーズが出てくる、有名な短調の激しい曲です。第2楽章は優雅に泳ぐ白鳥のような美しさ、第3楽章はまた短調が戻ってきて今からオペラでも始まりそうです。
K.488イ長調。第1楽章は付点のリズムの使い方が絶妙で、優しい光のように軽やかに曲全体を照らします。第2楽章はモーツァルトの影の部分を垣間見たような暗さ。うって変わって第3楽章はアレグロアッサイ。出だしの8度の跳躍からして喜びがはじけ飛んでいて、縦横無尽に音楽の世界を飛び回ります。
ただ、音符の並びはソナチネ程度なのに、いざ弾いてみるととても難しいのがモーツァルトです。一番難しいのはK.488イ長調の第2楽章でしょうか。8分の6拍子アダージョ。6拍子は1,2,3,4,5,6,や1,2,3,2,2,3,と数えたり、テンポが速い場合1,2,1,2,と、1小節を2拍子で数えたりしますが、難しいのは強拍と弱拍を必ず認識し、それを音の大きさで処理せず音楽に投影するところです。
1小節目3拍目までは少しだけ4拍目に進みます。4,5,6,拍目はかなり2小節目の1拍目にかぶさるように盛り上げますが、それはあまり表に出しすぎてはいけません。しかも①,2,3,④,5,6,を身体の深いところでしっかり感じていないと平坦になってしまいます。何もやっていないように見えながらリズムを感じ、淡々と弾くように見えて実は音色を変える難しさです。
更にペダルの繊細な操作や、左手の熟考された弾き方が必要なのは言うまでもありません。4小節目の休符の饒舌さ。5小節目に入った時の哀しみさえ感じるほどの輝度の高さ。10小節目の、ただの長三和音とは思えないアルペジオが作る、壊れやすく二度とは手に入らないもの…、そしてカデンツ…。冒頭のピアノソロが終わる最後の音と同時にオケが流れ込み、ここまでの素晴らしさに対する緊張感に対して心地よく脱力した感動のため息を誘いながら地平線の彼方まで音楽の奥行きを広げます。
これらの注意点は楽譜には書いてありません。 それに加え、言語のリズム(モーツァルトの場合ドイツ語)との関連も考慮して弾く必要性など、難しさがたっぷりの第2楽章ですが、その音楽の中に引き込まれてしまいますます熱がこもって結局夏バテしてしまいそうです。
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