2016.12.21
リサイタルのチラシともなると、写真うつりは命がけです。今は便利になって、何十枚、何百枚と撮りまくりできるので、思いがけずうまく撮れることもあります。それに写真は実物と違い二次元なので、別角度からの欠点は写りません。
しかし問題が…。あまりにも写りがよすぎるのも考えもの。これ誰、と言われてしまっても困ります。選考基準としては
①私だと分かる
②でも本物よりちょっとだけきれいめに撮れている
③欠点がうまくカバーされている
④更新されている(古い写真ではない)
この4点が重要になってきます。
他の方のチラシを見てみるとやはり皆さん実物より少しお美しめ。スタジオで撮ってらっしゃる方はライトの当て方もばっちりで、ご本人が日食のコロナ状態になっておられたり、下部からの強いライトでハリウッド女優なみだったり。○十年も同じお写真(④を無視)の大先生もお見かけしますです。
その昔肖像画の時代も、それらしく変更を加えるのは当たり前でした。ブロマイドとしての需要があった頃の肖像画の絵師は、注文主の要求通りに躊躇なく実物より美しく描いたと言います。ベートーヴェンやナポレオンの英雄的な肖像画はそのいい例です。
さて、上のベートーヴェンの肖像画。必ず音楽室で見かけるこの絵はシュティーラーという画家が描いたもの。この絵は本人とはかなり違っていることが分かってきています。それでも現代で知名度№1なのは画家の世渡りのうまさと、シンドラーの誇張と改ざんにまみれた伝記との相乗効果でした。 シュールレアリズムが登場する前の絵画の世界では、たとえ非日常的であっても絵をロマン的に理想化するのは当たり前。
この肖像画を私が考える上記の条件に当てはめてみると…。
①当時写真はおろか、テレビ、インターネットもない時代に本人を見たことがある人が少ないということでクリア
②小さい目はらんらんと輝く鋭く見開かれた目に、黒髪はライトカラーに、口元は強い意志をあらわす形に、色黒の肌は白く変更
③あばたは描かない
④絵師に言えば老け具合やしわのあるなしも思いのまま と、見事にクリアです。
「HEARTせんせ~、チラシの写真、綺麗~。」 と言われてしまうと微妙です。とにかくリサイタル当日舞台に登場した瞬間「誰?」という空気が漂うのは避けたいものです。
熊本市東区健軍
HEART PIANO ハートピアノ教室熊本