☆気ままに、音楽あいうえお☆ 「こ」 黒鍵のエチュード
2016.08.23
“ショパン作曲の作品10-5の練習曲のこと。1830年(20歳)の作品。変ト長調で書かれているので♭が6個ついている。右手はほとんど曲全体を通して黒鍵を弾く。(一音だけ白鍵がある)ショパンの練習曲集には他に〈革命のエチュード〉〈木枯らしのエチュード〉〈蝶々〉〈エオリアンハープ〉といった通称を持つものがある。ショパンは練習曲のジャンルを芸術作品にまで高めた。”
私が子供の頃憧れた曲の一つである〈黒鍵のエチュード〉。ショパン名曲集には革命のエチュード〉〈木枯らしのエチュード〉〈英雄ポロネーズ〉と共に必ず入っていて、まだ弾けもしないのに楽譜を買いそろえた記憶があります。
黒鍵は指にとってみれば試練の場所。体操競技でいえば平均台の上のようなものです。不安定な上に白鍵よりも幅が狭く突起している分(白鍵の幅は23mm、一方黒鍵は8.5mm)滑るというアクシデントも発生しやすいので、鍵盤とのコンタクトをかなり良くしないと余計な力が入ってしまったり、響かないやせた音になったりしがちです。鍵盤を捕らえる指先の場所は人によって微妙に違い、また指全体を丸めるか伸ばし気味にするかでも変わってきてなかなか黒鍵をうまく渡り歩くのは困難です。ショパンは未完成でしたが自らのピアノメソードを考案していたようで、伸ばし気味の指を提唱していたといいます。ホロヴィッツも伸ばした指で華麗なパッセージを軽々と弾いていました。
ショパンの曲に♭がたくさんついた曲が多いのは手の形と関係があります。彼は長い指を黒鍵に、短い親指と小指を白鍵に置いて自然な手の形で演奏することを目指していました。それで自然と選ぶ調は変ト長調や変ニ長調になってきます。〈小犬のワルツ〉は変ニ長調で♭が5個。「なんて譜読みが大変。」と思いがちですが指に鍵盤がフィットして無理なく弾けるので仕上がれば気持ちよく弾けるのです。レッスンでもまずこの説明をしてから変ニ長調の音階を暗譜で何度もよく弾いて、慣れてきてから曲に入るとスムーズに弾けていきます。また、黒鍵と白鍵のすきまが狭くトリルが弾きやすいという利点もあります。
〈小犬のワルツ〉も〈黒鍵のエチュード〉も、なかなかに難曲ですが注意深く練習していけば、必ず指がしっかりしてきて他の曲も安定して弾けるようになるようになります。それに何より華麗で人を惹きつける魅力のある曲です。
そうそう、あの名曲“ねこふんじゃった”も確か黒鍵がたくさんでてくる曲。なんとショパンの〈黒鍵のエチュード〉と同じ変ト長調ですね。