2023.10.07
9月のとても暑い日曜日のこと、上野に立ち寄る機会がありました。
旧東京音楽学校「奏楽堂」で毎週日曜日の午後、入館料300円でオルガンコンサートが聴けるとのこと。緑多い広い公園と言えども、この日も猛暑日です。それでも大勢の人が行き交う中を抜けて、上野公園の一番奥まで歩くと、いっときは老朽化で壊されるかもしれなかった日本最古の洋式音楽ホールは格調高く佇んでいました。
滝廉太郎がピアノを弾き、山田耕作が歌曲を歌い、三浦環が日本人初のオペラを演じ、日本で初めてモーツアルト、ベートーヴェンの交響曲が演奏されたホールです。
コンサートを聴き終えて、そう広くはない展示室で、音楽の教科書でも必ずや目にしたことのある作曲家の手書きの楽譜の音を追いながらゆっくり時間が過ぎていきました。日本の近代音楽の礎を築いた多くの音楽家が、ここで学び、私たちに素晴らしい作品を残してくれました。それらは日本の尊い財産です。
長かった今年の夏が過ぎ、10月になってやっと「小さい秋…」を見つけることができるようになりました。生徒さんたちはどんな「夏の思い出」が心に残っていくでしょう。 展示室ではもちろんこの曲の作曲者、中田喜直の作品の数々もガラスの中にありました。 小さい生徒さんたちは、きっとこの歌を知らないだろうなとは思っていましたが、なんと!「めだかの学校」を知らないという小学生が何人もいて。。。
作品が生まれた時代背景や日本の風景も、人の想いや日本語も、遠い日本のような? 関東大震災から100年、東京大空襲から間も無く80年、東京デズニーランドが開園して40年。
夏の日のビルの最上階からの眺めは、まるで違う景色が広がっています。子どもたちにとっては、歌詞の意味も想像し難い変わり様ですから仕方のないことかもしれません。それでも、日本の美しい音楽を、音楽を学んだ私たちが伝えていかなくてはいけません。
コロナ禍を経て、ますます歌を歌う機会が減りました。それぞれで動画を楽しむようになりました。ご家庭の中に子どもたちと一緒に歌を取り戻してほしいと願っています。