2023.07.21
カンヌで脚本賞に輝いた映画『怪物』監督:是枝裕和/脚本:坂本裕二を見てきました。
是枝監督の映画は、いつも何かしら宿題をもらうような余韻があって、好きなんです。そして今回は、坂本龍一が最後に関わった作品というのもあって是非見ておきたかったんですね。
物語は3部構成。小学校で起こったある事件を母、教師、子供たち、三者それぞれの目線で追っていきます。
初めは母の視点から。
簡単に感情移入してしまう私など、もう忿懣やるかたない気分で心の中で教師と学校を断罪していたのですが、次に視点が教師に映ると、自分の判断がグラグラと揺れ始めます。あれ、この先生そんなに酷くない、、むしろ被害者かも、、、。
そして、子供たちの世界が描かれていくにつれ、私の大人としての自信も揺れ始めます。
「怪物だれだ?」
真実を知りたいと思うのに、真実は曖昧で、真実は複雑で、善悪二元論の危うさ。見終わってしばらく、私も自分の見えていないところで、誰かを傷つけてきたのだろう、と考え込みました。
湖の見える街に鳴り響くホルンとトロンボーンが印象的でした。
柔らかく、懐かしくポー、ポーと重なる音は、あたかも言葉を超えて人と人とを繋ぐように、それまでの不気味さや、疑念を正してくれるようでした。
そして、最後は嵐の去った後の緑滴る山を、希望が走り抜けていく!
坂本龍一の音楽とともに非常に美しい映画でした。