2022.09.25
城崎温泉から一駅、江戸時代は北前船の寄港地として、今は焼杉板の家屋の立ち並ぶ静かで美しい漁港竹野にてダンスと楽器の即興セッションを見て来ました。
豊岡演劇祭の一演目
岩下徹×梅津和時 即興セッション『みみをすます(谷川俊太郎同名詩より)』です。
この頃は、あまり下調べをせずにヒョロッと劇場や美術館に行くことが増えました。そのほうが先入観なく、見たまま、聞こえたままを新鮮な感覚で楽しめるような気がするんですね。今回も、『みみをすます』というタイトルに惹かれ、勝手に詩の朗読でもあるんだろうか、と思っていたら、全然違いました(笑)
開演時刻が近づくと人影のまばらだった漁港に三々五々、人が集まり始めます。
演劇祭のスタッフ、演劇ファンのみなさん、近所のおばさん、犬、猫、野次馬、、、ここは竹野の漁業協同組合。朝にはその日の獲物が並び、夕になれば競りの行われる場所。今日の舞台はここです。
客席もなく、壁もなく、傍には漁具が転がっているような舞台。
始まりの合図はなんだっったかしら。
もちろん開演ベルなんてものはなく、管楽器のひと吹きだったか、ダンサーのひと動きだったか、、、
準備されたストーリーもなく、手順もなく、演じながら創っていくダンスと音楽。観客である私は、最初緊張しながら見ていました。
どんな風に受けとめたら良いのやら分からなかったので。シリアスなのかコミカルなのか。
雰囲気が変わって来たのは犬とのセッションぐらいからでしょうか。
ちょっと怖がりの犬がいたんです。
ダンサーが犬と絡み始めるとクスクス笑いが広がりました。
(あ、なんだ、そんなしかめ面して見なくていいんだ。)
ダンサーが移動するのに合わせて、観客も場所を動き始めます。
海辺に出たり、競り場に入ったり、、、一人の観客がいきなりおひねりを渡すなんて場面も!コミカルなシーンもありましたが、日暮れの岸壁で奏者と対峙して演じたシーンは忘れられない美しさでした。
ここにはクラシックの演奏会が失ったものがたくさんあると思いました。
私たちは通常、評価の定まった楽曲を、密閉された劇場で、十分に準備をして演じます。しばしば演奏は、それまでの準備して来たものの成果発表となり、観客は黙ってそれを消費する。消費する価値がないとみなされれば、厳しい批判に晒される。こういうあり方は、どこか息が詰まるような気がします。
もっと自由に、その時の空間、その時の空気に五感をそばだて、
今まさに生まれでたような一期一会のライブが、クラッシックの世界にも広がっていくと良いな、と思うのです。