2019.11.11
話題の映画(?)是枝監督の「真実(La Vérite)」を見てきました。
舞台は秋から冬へと差し掛かるパリ。
カトリーヌ・ドヌーブ扮する大女優の自伝「真実」が出版されるところからお話しは始まります。
「何よこれ、嘘ばっかりじゃないの!」と詰る娘。
「今までの私の仕事を否定された気がします」と言って去っていったベテラン・マネージャ。
周りの想いなど無頓着に、淡々と女優の仕事をこなすカトリーヌ・ドヌーブ、じゃなかったファビエンヌ!
そう、思わず役とカトリーヌ本人がだぶってしまいそうな当たり役。
これは是枝監督がこだわる、ドキュメント仕立ての演出法に秘密があるそうです。すなわち、きっちりと仕上げられた脚本に従って映画を作り込んでいくのではなく、その時々の役者さんに合わせて刻々と設定を微調整していく。
人と人との関わりの中から生まれる素の感情を大切にしている、ということでしょうか。
カトリーヌの天然ボケ?とも思える好き勝手ぶりが可愛かったですねー。
孫娘とのやりとりも微笑ましくて、
おばあちゃんの魔法で亀に変えられていたピエールお祖父ちゃんが帰ってきたシーンではクスクス笑っちゃいました。
テーマは「真実」。
過去の思い違いや。
真実だからこそ語られない秘めた思い。
相手を大切に思うからこその、ちょっとした嘘。
(実は見終わった後でも、もしかしてあれも嘘だったのかしら?と思うところがあって、まんまと監督にはめられた気がします。)
あまりに真実を追求しすぎると、その真実はほろほろと崩れていく。なにが本当なのか不安になってくる。それでも、人と人とが触れ合うある一瞬に、この時間は「真実」だと確信できる瞬間がある。そんな瞬間を丁寧に積み重ねていければ、人はまだ信じ合えるんじゃないでしょうか。
全編に流れる音楽と晩秋のパリの情景が美しく、静かな詩情が広がる映画でした。