2017.03.19
選ぶ。
人生のなかに、生活のなかに、そして音楽のなかにも
選ぶ場面はたくさんあります。でも、「選ぶ」ってじつはとっても難しいことなのかも。
ここ数日、そんな事を考えながら過ごしていました。
発端は一冊の本。
加藤陽子著 「戦争まで~歴史を決めた交渉と日本の失敗」
あ~、またそんなお堅い本を、と言われそうですが
ここ最近、日本近代史に関する自分のあまりの無知ぶりを反省。50にして勉強しようと思ったわけです。こちらの書籍は加藤陽子氏が高校生におこなった講義
(2015年~2016年)をまとめたもの。まさに今の私にぴったり。高校生にまざって勉強しなおすぞ、と意気込んで手にとってみました。
その序文で加藤氏は語ります。
なぜ「高校生に歴史を語り、その問答を本にまとめようと思ったのか?」
それは「高校生が選択を迫られる、有限の時間を生きているからだ」と。
歴史の重要な場面には「選択」という行為があります。
でも、それは正確な情報のもと、適正な選択肢が提示され、かつ選択する側も冷静な判断力を持っていてこそ功を奏する行為です。
これは、その『「歴史を選ぶ」際の作法』を「選択を迫られている」高校生とともに考えてみた、その道程を記録した書物でもあります。
さて、話変わって音楽。(随分話が飛びますが)
音楽にもたくさんの「選択」の要素があります。お気付きでしたか?
みなさんが最初に頭を悩ますのはテンポの設定ではないでしょうか。
例えばAndante。普通は「歩く速さ」と教わるわけですが、歩く速さって人によって違うのでは?もっといけないのはModerato。「中庸な速さ」って、もう訳わかりません。
それから指使い。
中上級者になり『原典譜』という楽譜を使い始めると指使いの指示が0、なんて事もあります。適当に行き当たりばったりで弾いていると、本番直前までミスタッチに悩まされる事に。
先生は指使いを決めなさいと言うけれど、はて、何十通りもの指使いの中からどれを使えば良いのか。
それからアーティキュレーション。それからカデンツのリタルダンドの塩梅。それから、それから、、、。
実はピアノの練習というのは、膨大な試行錯誤と選択の繰り返しなのかもしれません。
しかも、悩みに悩んで一つ一つ自分の手で選んだつもりでも、知らぬ間にその時その時の流行に影響されていたり。ちょうどお洋服を選ぶのに似ていますね。
なんだか、選ぶというのは大変なエネルギーを要しそうです。
しかも、何を選ぶかによって自分の内面が露わになってしまう。
(選んだものが周りと全然違っていたらやっぱり居心地が悪い?)
さらにいうと、何か一つを選ぶというのは他を捨てることになる。
いっそ人に選んでもらう方が楽チンなのかしら?
「選択」にはたしかに、そんな怖さや苦労があります。
でも、そうやって丁寧に一つ一つ選びぬき、磨き抜いた演奏は『私だけのオリジナル』と胸を張って良いと思っています。
さあ、来週の日曜日は熊猫音楽舎(山本真美ピアノ教室)の発表会。
生徒さんそれぞれのオリジナルな演奏を聞けるのを楽しみに、ただいま最後のレッスンをさせて頂いています。