2015.09.17
「魔笛」は筋がおかしい。最近ではモーツァルトが入団していたフリーメーソンの教義を暗示しているという考え方が定説になっている。 しかしそんなことと関係なく人はこのオペラの魅力に屈服する。その原動力となっているのはひたすらにモーツァルトの音楽と愛の美しさ・・・。人間が大好きできっと愛の力を信じていたであろう彼の音楽だけであらすじの矛盾を一掃してしまう。
パパゲーノはかわいい奥さんが欲しい。でもなかなかうまくいかない。何度も失敗してついには命を絶とうと決意。ところが物語は急転直下、かわいいパパゲーナが現れ二人はめでたく夫婦になる。そこで歌われるのが「パパパの二重唱」だ。
愛の力、出会いの素晴らしさを体いっぱいで表現して歌う二人。歌詞の内容は
「パ、パ、パ。パパゲーノ!」
「パ、パ、パ。パパゲーナ!」
「神様が私たちにたくさんの子供達を授けてくれたら!」
「はじめは小さいパパゲーノ、それから小さいパパゲーナ、またもうひとり小さいパパゲーノ、そしてそしてもうひとり小さいパパゲーナ!」
「たくさんのパパゲーノ、パパゲーナ、たくさんのパパゲーノ、パパゲーナ、たくさんのパパゲーノ、パパゲーナ・・・!」
さえないパパゲーノが欲しいものはかわいい奥さんと子供達、それだけ。人と人との出会いの神秘、そして尊さ、ささやかなしかし最も大切なことを自然に愛おしく思うこと、そのことを私たちに目覚めさせるモーツァルトの音楽。
この楽しい曲が幸せというものの真のツボを押す。悲しいわけではないのに涙があふれる。
ところで「魔笛」第1幕、パパゲーノが魔法の鐘を打ち鳴らすところにこんな歌詞がある。
正しい人が誰でもこんな鐘を持っていたら
悪い敵はたちまち消え失せ心穏やかに暮らしていけるでしょう!
友となり仲良くなればすべての苦しみがやわらぐ
思いやりがなければこの世の幸福は消え去ってしまう
おとぎ話、と言ってしまえばそれまでだが「魔笛」にはいろんなものが入っている。その根源的なものはモーツァルトの音楽にのって現代の人々の心にも響く。
パパゲーノ役には1991年の若い頃のアントン・シャリンガーという歌手が一押し。明るくて人なつっこくてあまりにもパパゲーノにぴったりで素晴らしい。
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