2015.03.30
桜がきれいですね。春は別れの季節です。
私のピアノを20年以上ずっと調律してくださっていた調律師が引退することになりました。うちへ来られることはもう、ありません。
引退される日がくるなんて考えたこともありませんでした。でも気が付かないうちに時は流れ、彼の髪はすっかり白くなっていました。
有名なピアニストの調律でも、私のような者のピアノの場合でも同じように熱心に、一番いい音で響くように一生懸命調律してくださいました。まだ若く何も分からなかった私に、ピアノの音とはこういうものだ、音が融け合うとはこういうことだ、と長い間かけて調律を通して指し示してくださいました。寡黙でピアノのことしかしゃべらない方でした。
ずっと一緒だった気がします。リサイタルでもずっと舞台袖で見守ってくださり、アンコールのタイミングなども背中を押して合図してくださいました。 私の中でなくてはならない人でした。
でももう去って行かれる・・・。
そう思ったらこの長い年月が急に私に押し寄せてきて胸がいっぱいになりました。
春は花が咲き暖かい太陽の光にうれしい気持ちになる一方で、どうしようもない不安やさみしさを感じる別れの季節でもあります。美しい桜の花も少し曇った日やうすら寒い雨の日などなんとも言えないさびしさを湛えています。いや、太陽のもと、薄いピンクが青空ときれいなコントラストをつくりだしている最中でさえ、はかない命を連想しない瞬間はないように思うのは私ばかりではないでしょう。
春が題名についている曲はメンデルスゾーンの「春の歌」や、モーツァルトの「春への憧れ 」など・・・。でも今年はショパンの「春」という小品を弾いています。
ショパンもきっと桜を見ながら季節のうつろいにメランコリックなものを感じ取ったに違いない作曲家のひとりですから。
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