2015.03.09
~グルックが1762年に作曲した三幕からなるオペラ。時と所・・・ギリシャ、地上と黄泉の国。登場人物・・・オルフェオ、エウリディーチェ、愛の神。オルフェオを現代ではアルトまたはテノール、カウンター・テナーが歌う。その昔はカストラートという去勢された成人男性が歌った。ギリシャ神話に登場するオルフェオとその妻エウリディーチェとの悲しい運命の物語を描いたオペラ。当時流行の歌手の声の技巧を見せびらかすだけの音楽を厳しく戒め、音楽とドラマの一致を目指すオペラ改革をしたグルックの代表作である。~
あらすじ・・・亡くなった妻エウリディーチェを取り戻すために黄泉の国へと向かうオルフェオ。何があっても地上に戻るまでは決してエウリディーチェを振り返って見ないこと、話をしないことを愛の神と約束します。しかし夫の愛を信じられずに絶望する妻に事態を説明しようとしてしまったためにエウリディーチェは息絶えてしまいます。
以前詩の朗読会に詩とピアノのコラボでおじゃまさせて頂いたときにこのオペラの中の「精霊の踊り」のリクエストがあり、詩の朗読に合わせてBGMでピアノを演奏しました。黄泉の国の精霊たちが踊っている場面の哀しく美しい曲。フルートで演奏することが多いですがピアノソロでとのご要望ということで、ケンプ編曲のピアノソロ版を準備しました。
詩は、天使を見た日のことを幻想的に綴ったものでした。物語や映画のように大がかりでなく演劇のように具体性を持ったものでもない…しかし人の感覚に訴えてくる何かを表現する詩の世界に音楽を添えることが、表現の更なる説得力を生み出すことを詩との共演で体感しました。グルックも音楽と言葉、そして演劇が融合したオペラというジャンルで音楽の本質を生み出そうとしたのでしょう。彼は音楽はその真意を表現することこそが大事であり、歌手が自慢ののどを披露する場ではないという音楽改革に命をかけた人でした。
詩人の先生は私より年齢は上なのにとても可愛らしくてチャーミングで優しい方。音楽ではドビュッシーやショパン、また絵画ではモディリアーニとその時代の芸術家達に興味をお持ちのようでした。
そんな一見おだやかな先生ですが若い頃に事故でご主人を亡くされています。先生が当時発表された有名な詩集は涙なくしては読めない作品・・・。ひょっとしてこのオペラを何度も聴かれていたのではと思いました。自分とオルフェオを重ね合わせて大事な人を突然亡くした悲しみの時を生きてこられたのでしょう。死の国の天使達が踊っている曲をどんな気持ちで聴かれてきたかを想像すると言葉もありません。
“音楽が表現するものは存在しているけれど言葉で説明しづらい感情――絶望や苦悶や死への衝動までにも及ぶ”とピアニストのポール・ルイスは言っています。そして“音楽は聴く人が絶望の中にあってもかすかな希望がみえたり、前に進むきっかけになったりもする。”と語ります。
死と愛をテーマにした名作「オルフェオとエウリディーチェ」。「精霊の踊り」や「エウリディーチェを失って」は、あまりにも美しく、生きている私たちの心にいろいろなことを語りかけます。聴く人が絶望していても幸せでも、音楽は私たちに生きることの意味を問いかけているようです。
http://www.kawai.co.jp/pnet/602574/topics/58421/ 「考えさせられるご質問」
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