2014.05.12
暗譜
~譜面を見ないで楽器を演奏すること。ピアノを習うとだいたい曲の仕上げに課せられる。最初の音取り、譜読みの段階では覚えて弾くと音符が読めなくなるからと禁止され、最終的にはなぜか覚えさせられるというやっかいなもの。~
ピアニスト達は膨大なレパートリーを暗譜しています。譜面を立ててソロ演奏する人もいますが多分彼らの理由は凡人な私みたいに「覚えていないから」ではないと思います。
実際リヒテルが譜面を見ていたのは晩年絶対音感がずれてきて今まで覚えていた音と実際に出す音にずれが生じたためと言われています。頭で覚えている音を弾くと違う調になるからです。彼の暗記力自体は晩年もかなりのもので、かなり昔の知人でも名前を完璧に覚えていたと言われています。
さて、どんな場面で暗譜なのか?というはっきりした決まりみたいなものは実はよく知りません。
ピアニストでも現代音楽では見ることもありますし、歌や器楽の伴奏は見る人が大半ですが暗譜の伴奏者も見たことがあります。オーケストラの団員が交響曲を全曲暗譜で弾いているのを見たことはありませんが、カラヤンはレパートリー全てを暗譜していたといいます。協奏曲でソリストはバイオリンでもピアノでも暗譜で弾きます。バイオリニストはピアノ伴奏のときはよく譜面を見ていますが無伴奏のときは見ません。
では、なぜ暗譜しなければいけないのか?正しい答えはわかりません。 先輩のピアノの先生がおっしゃっていました。「譜面立てているから弾けるってもんでもないからね。難しいよね。」 “覚えるまで練習して熟練する”ところに暗譜の意味があるかもしれません。
グレン・グールドが公開演奏ステージでの演奏活動を停止してレコーディングに専念することにしたのは、暗譜に自信がなくなったからではありません。彼はレコーディング中も完全暗譜。おもしろいビデオがあります。
バッハのコンチェルトを弾き振りするグールド。もちろん完全暗譜。しかしその後方で演奏するオケの面々。みんなグールドより年配でいかにも経験豊かそうな、クラッシックの教授っぽい?お偉い感じの方々…(非常に主観的な感想です)しかしその教授陣はというと、譜面と首っぴきです。音楽の世界に陶酔して目をつぶったまま身体をゆらゆらとうねらせ演奏するグールド。 暗譜しているグールドの方が確かにオーケストラの団員より音楽に入り込んでいる、という感じが伝わってくる映像でした。
それにしてもピアニスト達の記憶力には驚かされます。70代80代になってもバッハやベートーヴェン、ラフマニノフなどなんでも暗譜で楽々と弾きます。膨大なレパートリーを弾きこなす高齢のピアニスト。加齢が記憶力を退行させることは暗譜以外の日常生活でも悩ましいこと。物忘れ予防、なんて彼らには無関係なのでしょうか?それともピアノを弾くという行為自体が脳を活性化する…?!
あれ?
第一回 “暗譜”の結論は “物忘れ予防には是非ピアノを” という、安易なピアノ宣伝になぜか着地してしまいそうです。私としては不本意なので
『ピアノが長続きするかどうかは…』
『私がピアノ教室に打ち込める理由』
によろしかったらお進みください。
熊本市東区健軍
HEART PIANO ハートピアノ教室熊本