2026.08.31
子どもの頃、ピアノを習っている友人たちといつも話題になっていたのは”いかに易しい楽譜を使い、最低限の労力で、豪華に聞こえるように弾くか”でした。今にして思えば浅はかな子どもでしたが『簡単に弾けるけど豪華に聞こえる』というのはみんなの一致した価値観、そしてあこがれでした。
当時の少ない情報の中で話題になっていたのは、家庭で楽しむために書かれた、エステンやワルトトイフィルなどの、いわゆるピアノ学習者が気軽に家庭で楽しむピアノ曲を書いた作曲家の作品でした。以前は流行のポップスよりも、そのような曲の方が身近でした。
人気だったのは例えば
♪アルプスの鐘
♪アルプスの夕映え
♪紡ぎ歌
♪ブルクミュラーのテンポの速い作品
など。
特にアルプス系はペダルや低音が使われていて豪華感満載。めちゃくちゃにペダルをいっぱい踏んだりして…。
グワングワンに響かせるのが上手な弾き方、豪華で迫力満点なのが上手な証拠、と信じていた昔の時代の子供でした。
言うまでもなく、本当に上手な人の三大特徴は
①楽譜に音が少ない名曲→芸術的に素敵に聴かせる
②楽譜に音が多い超絶技巧の名曲→簡単そうに弾く
③平凡な曲→野の花のようにサラッと弾く
クーペルヴィーザー=ワルツという短い曲を、ピアニストのチッコリーニがアンコールで弾いています。この曲は、クーペルヴィーザーという画家の結婚式のためにシューベルトが作った曲で、さーっとそよ風が吹き過ぎるようなさりげない曲ですが、温かみにあふれ、幸せをそのまま音にしたような素晴らしい小品です。
私は聞いたことも楽譜も見たこともありませんでしたが、深い音で紡がれていくこの曲のチッコリーニの演奏に一発でノックダウンさせられてしまい、楽譜をさがしました。
なんと音の少ない簡単な楽譜だったでしょう。こんなにシンプルな音の並びの中から、あんなに慈愛に満ちたうっとりする音楽が生まれてくるなんて、信じられませんでした。一流のピアニストにかかると、一音一音がまるで宝石のようで、美の世界へいざなわれてしまいます。
楽譜は初心者にはちょっとドキッとするフラットが6個の調。しかし実はねこふんじゃったと同じ調なので、指当たりは良く弾きやすいのです。慣れてくれば、移動も少なく手の感覚で目をつぶっても弾けそうなくらいです。
グリーグ作曲アリエッタ(抒情小品集)
ショパン作曲ワルツ イ短調(遺作)
なども、音は少なく短い曲ですが、メロディーをちゃんと歌わせて弾くと、音のひとつひとつが心の奥まで語りかけてきます。
「この音だよね。」と、自分が吟味した音で奏でれば、美しさの中にも悲しみや愛がにじんできて、指の華麗な速い動きやゴージャスな曲へのあこがれはどこかへ行ってしまい、ただ音楽と心につながってくるシンプルな音だけが気持ちを包み込んでくれます。
とか言って、実はグワングワンに響かせ弾くラフマニノフも私は結構好きなのです。ピアノは本当に奥深く、幅広く、いろいろな魅力を持っていますよね!
チッコリーニ聴いて、楽譜見て、「え、音少なっ!」って驚いた。
という今回でした。
また✨
© Heart Piano 2026 All rights reserved.
熊本市・東区健軍ハートピアノ教室
無断転載・転用はご遠慮ください