2026.04.15
ほどよい冗談は心をほぐしてくれます。物事は斜めに見たり、あえて視点をずらしたりすることでおもしろさが生まれます。
クラシック音楽にも、そんな冗談からできた音楽があります。
まずはドイツの作曲家パウル・ヒンデミットの
『朝7時に湯治場で二流のオーケストラによって初見で演奏された「さまよえるオランダ人」序曲』(原題:Ouvertüre zum „Fliegenden Holländer“, wie sie eine schlechte Kurkapelle morgens um sieben am Brunnen vom Blatt spielt)
というタイトルまで長々しいパロディ曲です。これは、リヒャルト・ヴァーグナーの「さまよえるオランダ人」序曲という、さっそうと輝かしく壮大な作品を元に書かれた冗談の音楽。なんと、正確に演奏しさえすれば、ちゃんと(?)下手くそに演奏できるという高度な作品です。
頻繁に弦楽器が音程を取れなくて変な音を出しますが、すべて楽譜に書かれています。ギーギーと汚い音を出すのもわざと。
終盤のクライマックスでは急に原曲にはない3拍子のワルツに変化。まるでピエロが出てきたような大騒ぎで楽しく曲の流れをぶち壊し、もちろん決めの最後の和音は不協和音でばらけてオッシマイ、です。
モーツァルト作曲『音楽の冗談』(Ein Musikalischer Spaß)K.522も、下手な作曲技法や、下手な演奏を盛り込んだおかしなおかしな一曲です。
分かりやすいのはホルンの脱線。やはり管楽器の中でも音の高さを安定させるのが難しい楽器だけあって、一番のやり玉にあげられています。
普段から楽器を人前で演奏をする時は、うまくいくかどうか心配や緊張がつきものですが、特にクラシック音楽は間違えてはいけないとか上手に演奏しないといけないとかのハードルが高めなことが多いかもしれません。
しかしこの曲でぷっぷーっと変な音を出せば、奏者も観客もみんな笑顔笑顔。モーツァルトと一緒に変な音を楽しめば、上手かどうかなんてどこかへ吹っ飛んでしまいます。モーツァルトもきっと大笑いして指揮棒を振っていたでしょうね。
曲の中には、和声の進行をわざと変にしたり、小節数を割り切れないようにして居心地わるくしたりと、気付きにくいのにツウな人には分かる、といった仕掛けも。
終わりそうで終わらなくて、
終わりそうで終わらなくて、
終わりそうで終わらなくて、
さあ!と飛び込んだ華々しいエンディング。
決めの最後の和音はやっぱりヘ~ンな不協和音でばらけてオッシマイ。
もしかして王様の食卓の時のBGMにもこっそり音楽の冗談を忍ばせて、モーツァルト自身がひとりでぷっぷーっと笑っていたかもしれません。
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