2013.07.29
脳は目や耳などの五感を使って現実世界の情報を取り込んでどう行動すべきかを判断しています。しかしデータとしてはかなり不完全なのだそうです。その欠落している部分を補うために脳は勝手に仮想環境を作り出し、自分の行動に役立てているのです。
図形の無色の部分に色がついて見えたり、勝手に図形が回りだしたりするテストがあったことを思い出します。
現実世界と脳が作り出す内部モデルのギャップが大きいと、人の行動に矛盾が生じ、それを一般的に幻覚とか妄想とか呼ぶのだそうです。
幻聴に悩まされたというシューマンの精神疾患は有名です。聴いたこともない音楽が幻聴に現れる時「完璧な形で完成された、素晴らしく美しい音楽が頭の中で聴こえるんだよ。遠くから聴こえる金管の響きのようで、大変に壮麗な和音の伴奏がついているんだ。」と興奮して語ったそうです。
ただシューマンの幻聴の驚くべきことはそれが創作に結びつく新しい内容だったということです。一般的な患者の幻聴は以前聴いたことのある曲に限られるのに対し、シューマンのそれは彼のオリジナルだったところです。シューマンのような創造者においては、幻聴までが新しく生みだされた美だったということです。
このような脳の働きは人間にとってなくてはならないものです。しかしそれが時には幻覚と呼ばれ、時には創造とよばれます。 幻覚、幻聴というと、特別な病的な世界の中だけのことかと思っていたことが普通の脳の働きから由来しているとは…ましてや芸術活動と大いに結びついているとは驚きです。
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