2023.06.15
雨に打たれる。
雨に包まれる。
雨が洗い流す。
雨は見る人の気持ちに結びつきやすい。
そして雨と涙はよくセットになる。
ブラームス作曲《雨の歌》(詩:Klaus Groth,1819-1899ドイツ)は遠い日を思い起こさせる歌曲だ。
“雨よ降れ降れ
子供の頃の夢をまた目覚めさせておくれ
砂に泡が立つ時に”
私が小学生の頃、合宿で山奥の学校に一週間寝泊まりした。近くに川があり、普段から水流の音がしている。
それが雨になると、もうすごい。
夜に布団の中で雨の音をじっと聞いていると、自然への畏れを感じつつも大きな優しさのようなものの両方に包まれていくのを感じた。
“もう一度聴きたい、
あなたの優しい、湿った音、
私の魂をそっとつつんでください
子どものころの敬虔な畏れとともに”
大人になった私。今日の雨は重たい気がする。
すぐ近くが神社で、土の地面が多いからか。それとも大木のたくさんの葉たちひとつひとつが雨を受け止める音なのか…。
庭でせっかく咲いたペチュニアが萎んで雨に濡れ、ナメクジのようでぎょっとする。
雨はいつも聞こえる音をすべてかき消す。遠い電車の音や鳥のさえずり…。
雨の膜で外界と遮断されて、雨と自分しか存在しなくなる。雨どいから激しく落ちる水音には、遠くで流れる川の濁流の激しい音も混じっているのだろう。
心の中にも雨は降る。
雨だって降らなきゃ困るものだけど。
ブラームスの《雨の歌》は優しく語りかける。
熊本市東区健軍
HEART PIANO ハートピアノ教室