2022.08.30
「アウト~~!!」
甲子園で砂ぼこりを浴びた審判のゼスチャーは劇的で、ただセーフかアウトかという事実を示すこと以上に、気持ちがドラマティックにゼスチャーに立ち昇っていて見入ってしまいます。監督さんの表情やブロックサインを送るゼスチャーも、試合の行方と共に興味深く目で追います。
人はゼスチャーや表情で、事実としての情報と感情を伝達します。指揮者もゼスチャーや表情でオーケストラに音符の情報を記号として伝達し、更に彼の中に流れる音楽の中身(どう表現するか)も奏者たちに分かるように伝えます。
ピアノを弾く時にも、指揮者を参考にすることは音楽表現のヒントになります。強弱はもちろん、音楽の流れや休符の感覚など、指揮の技を使って身振り手振りのゼスチャーで説明すると、ピアノのレッスンで生徒さんも理解しやすくイメージがつかみやすいようです。
例えば、グリーグ作曲《山の魔王の宮殿にて》(連弾)のレッスンの時。この曲はひたひたと魔王が近づいてくるように小さく不気味な音で始まりますが、後半に向けて音が多くなり激しさを増し、大音量で盛り上がります。その最後の聞かせどころにいきなり現れる両パート同時の休符。ここは恐ろしい魔王の宮殿でついに魔王に遭遇してしまったクライマックス、楽譜上休符の無音が盛り上がった音楽を凍り付かせ緊張感を高めます。無音の瞬間に心臓のドキドキが聞こえてきそうです。
ありがちなのが、連弾ということもあり息を合わせようとして、つい1,2っとお互い休符を数えてしまうことです。息を吞む大事な瞬間なので「さんハイ。」のような、のどかな数え方はピッタリきません。
そこで指揮の出番。巨匠の真似をして私が指揮をしてみせます。生徒さんは私のゼスチャーに大爆笑なのですが、笑いを誘ってしまうしかないこの私の素人指揮を見ながら弾いてみると、なんとバッチリ弾けてしまうのです。✌️もちろん顔芸付きです(笑)。表情とゼスチャーの偉大さを思い知る瞬間です。もちろん本物の指揮者はオーラが半端じゃないので、こんなものではないのは言うまでもありません。
甲子園もさまざまなゼスチャーで試合は進んでいきます。試合後、俺のせいで負けた、と泣いているチームメイトの肩を何も言わずポンポンとたたくチームメイトのゼスチャー…。その動きだけですべての優しさを表現していて「いいなぁ…。」とジ~ンとしてしまいます。
熊本市東区健軍
HEART PIANO ハートピアノ教室