2021.08.12
「新三郎様、新三郎様、私を中へ入れてくださいまし。御札が張ってあっては入れませぬ…。」
むむ。御札で進路を阻まれるものといえば、そう“幽霊”です。新三郎への恋わずらいで死んでしまったお露さんが成仏できず、幽霊となって毎晩会いにくる『牡丹燈籠』。それはそれは恐ろしい結末が待っておりますです。
夏は怪談話やきもだめし…怖さでぞわっとしてひと時暑さを忘れます。夫の裏切りから毒殺されたお岩さんが幽霊となって復讐する『四谷怪談』、主の大切にしている皿を割ってしまい死罪となったお菊さんが幽霊となって毎夜皿を数える『皿屋敷』…。日本の三大怪談は『四谷怪談』『皿屋敷』『牡丹燈籠』だとか。すーっと冷たい風が吹いてきそうです。
クラシック音楽にも怖い曲はたくさんあります。西洋の怖さは日本より迫力があるものも多いです。ムソルグスキー作曲《禿山の一夜》やオルフ作曲《カルミナ・ブラーナ》は迫力ある怖さ。目の前に怖さがそびえ立っています。シューベルトは《魔王》も怖いですが、《交響曲未完成》の冒頭は“墓場から吹く風”と表現する人もいる、ぞくぞくする怖さです。モーツァルトのオペラ《ドンジョバンニ》にも最後に激しくドラマティックな音楽と共に亡霊が出てきます。
またばっちり《幽霊》と付いている曲があります。ベートーヴェンが37歳ころ書いた「ピアノ三重奏曲 第5番 ニ長調」Op.70-1は《幽霊》といわれています。第2楽章冒頭が少し悲しげなのでとか、ハムレットに出てくる亡霊と重ね合わせているからとか、言われていますが、案外はつらつとして楽しい曲です。
シューマンの作品にも《幽霊変奏曲》"Thema mit Variotionen – Geistervariationen über den letzten Gedenken"という晩年の曲があります。この曲を作曲していたころのシューマンは精神を病んでおり幻覚や幻聴も激しく、自殺未遂を図ります。しかしその幻聴も彼の最後の創作の泉となりました。病気から来る幻覚の中で書き上げられたこの曲は変ホ長調の美しい穏やかな曲です。
”Geister”には”幽霊”のほかにも”精神”という意味もあるので、《精霊の主題による変奏曲》《天使の主題による変奏曲》と呼ばれたりもします。
さて、日本の幽霊の条件は
①髪が長い
②痩せている
③もちろんこの世のものでない
④強い想いを抱えている
⑤わりと女性
やだ~。四つまで当てはまってしまうわたくしでございます。(強い想いというのはピアノに対してです!!)
熊本市東区健軍
HEART PIANO ハートピアノ教室