2017.06.10
その季節しか出会えないものは遠い記憶をお土産に運んできます。びわをむいていると、びわの葉茶やたんぽぽ茶をせっせと飲んでいた祖母や、この時期に若くして亡くなった優しかった叔母のことが私の中によみがえります。そんな時、まど・みちお作詞、磯部俶作曲「びわ」という童謡曲を思い出します。
まど・みちおさんは、びわのことを“やさしい” “しずか”だと言います。そしてその熟れ方を “だっこしあっている”と表現します。なんて優しい視線なのでしょう。
びわの皮はうぶ毛が生えていてふっくらしているので手で簡単にむくことができます。桃にも似ていますがずっと小さくて形もまん丸ではないところが控えめな感じです。いくつかがかたまってなっているところが本当に“だっこしあっている”ように見えます。「びわ」の歌詞の根底にある、まどさんの優しさに包まれて、びわを見る私の心も優しくなります。
まど・みちおさんはとても高いレベルで繊細に、研ぎ澄まされた感性でものを見ておられます。心を表現するために、自分を覆うものをすべて取り払って純粋な気持ちで表現したいものに向かいます。常に裸にする習慣がついている心は、感動が大きい分他のことにも普段から傷つきやすく、繊細な表現力と傷つきやすさとは常にとなりあっています。
まどさんは「命」についてこう言います。
「命」っていう言葉があるおかげで
涙を出すことができます
「命」のないものは
何ひとつないということで
その涙がしみじみと
我が身を潤してくれます
言葉は人の心をえぐる凶器ともなりますが、優しい人が紡ぐ言葉は人を救います。ピアノの音もまたしかり…。
“しずか”なびわを手の平にのせて「びわ」を口ずさみながら、色々なことを考えます。
熊本市東区健軍 HEART PIANO ハートピアノ教室