かわいピアノ声楽教室

声楽のレッスンを受けた後
先生に夕食を誘っていただきました。
近所のお蕎麦屋さんで
出前をとって
それを先生のご自宅で
一緒に頂くことになりました。


ほどなくして、
注文したお蕎麦二人前と肉団子が一皿
届きました。出前とは言え、
陶器の丼と皿に丁寧に盛られていて
とても美味しそうに見えました。


にも関わらず
先生は、わざわざ別の陶器の器に
それらを移し変えていました。
出前の器の模様が
お気に召さなかったようでした。
洗い物が増えるとか、めんどくさいよりも
お気に入りの器で食べる事のほうが
先生にとっては重要なのでした。


そして　シャンパングラスに
シャンパンを注いでもらい
すっかり恐縮してしまいました。


じゃあ、乾杯しましょ。


シャンパングラスを持つ先生の所作は　
とても綺麗で
オペラのワンシーンのようでした。
シャンパンとともに
美しく盛られた蕎麦と肉団子に
出前の面影はなく
ワンシーンに収まっているのでした。


美しい音色に、こだわりぬいた先生の
私生活でも美を崩さない姿勢を
目の当たりにした時間でした。


『捨てていい音は一音もない。
全ての音にエネルギーがあって
フレーズの最後まで
美しく演奏しないといけない。』


レッスンで、よく言われていました。


大好きだった先生が
若くしてこの世を去ってから
今日で一年が経ちました。


思い出さえも美しい先生でした。