2025.10.04
今は高校生の生徒さんが小学生だった時の話です。どうしても現役の生徒さんの話は書きづらいので昔の話になりがちなんですよね(^^;
ピティナ・ピアノステップという、発表の場があるのをご存じでしょうか。ヤマハやカワイのグレードテストのように級がある部門と、自由に曲を持ち込むフリー枠があります。
▼ピティナ・ピアノステップ
https://step.piano.or.jp/
そのブリー枠で、ジブリの曲を弾きたいと言った男の子がいました。5年生のH君です。
フリー枠は、試験やコンクール前にプロのアドバイスがほしい人が課題曲を弾くことが多いのです。H君は初級者なので、少し心配しました。誰かに傷つくような事を言われて、やる気をなくしてしまうかもしれないと思ったんです。
やんわり説明しましたが、出たいというので付き添いました。やはり当日はうまい人ばかりです。そして、H君の順番が来ました。
堂々と鳴らした第一音。会場の空気が一瞬で変わる素晴らしい音でした。
簡単なアレンジ楽譜でしたが、外遊びが得意な子で指がしなやかなんですね。臆することなく引き切った勇気に、会場からも好意的な拍手。そして、すてきなサプライズがありました。
同じ枠で演奏した上級者の男の子が、H君宛にメッセージをくれたんです。ステップでは好きな演奏者にカードを渡せるんですね。
「とても良かった。これからも頑張って」
H君も返事を書きました。
「ありがとう。君も頑張れ」
縮こまっていた自分が、なんだか恥ずかしくなりました。
メッセージをくれた男の子は、知っていたのでしょう。人前で弾く怖さを、本番までに費やした時間の長さを、そして良い音を出す難しさを。
ピアノを教えていると、時々生徒さんから大事な事を教わります。
あんなにうれしかった日はありませんでした。