2025.09.29
レッスンの後、帰らない子がいました。
帰るように促しても、全く動かないでいつまでも遊んでいます。教室が心地よかったのでしょうか。次の子のお父さんがムっとしています。あらら、困ったな。
親御さんに事情を伝えるのは簡単です。でも、言えば辞めてしまうだろうと思いました。幸い、うちの娘が家にいたので一緒に遊ばせておくことに。
すると、どうでしょう。他の生徒さんも帰らなくなりました(爆)。
いつしか全員学校が終わるとうちにやってきて、最後の子が終わるまで遊ぶのが慣例に。まるで児童館です。
ですが、これがたくさんの幸せを運んでくれました。
まず、子ども同士でペアを組んで連弾がしたいと言ってくるようになりました。ムっとしていたお父さんは、虫取り網を持って来ました。レッスンが終わると全員を公園に連れて行ってセミとり大会です。
暗くなって迎えに行くと「花火がしたい」。全員で花火をやって帰ったのは楽しい思い出でした。
そんな自由な生徒さんたちでしたが、残念ながら高学年になると落ち着いてしまうんですね。
次第に真っすぐ帰宅するようになり、中学入学とともに卒業です。中学では、吹奏楽部に入ったそうです。
先日おうちの前を通ったら、龍笛を練習する音が聞こえてきました。吹奏楽じゃないんかい。相変わらず自由ですが、まだ音楽を好きでいてくれているようです。
あの時、叱り飛ばして正論でぶん殴っていたら、音楽が嫌いになっていたかもしれません。受け入れてくださった他の生徒さんと親御さんには、感謝しかありません。
以上が、私の中の当たり前に風穴を開け、平凡なピアノ教室を子どもたちの楽園に変えてしまった生徒さんの話です。いろいろな教室がありますから、異論はもちろん認めますよ。
でも私は、輪になって花火を持った子どもたちの、楽しそうな顔が忘れられないんです。
いつかまた、やりたいな。