2026.05.27
【積み重ねは、消えない】
私事ですが、
中学一年になった息子が、中学入学後から少し様子が変わりました。
一日中むすっとして、
声を掛けても反応が薄い。
ずっとスマホを見ていて、
帰宅後は、何もする気力がないように見えました。
小学生の頃は、
平日でも4〜5時間、
休日は8時間近くピアノに向かっていた子です。
でも、中学に入ってからは、
やる気がないというより、
“立ち上がれない”
そんな状態に見えていました。
その中でも、不思議と毎朝ハノンだけは欠かしませんでした。
どんなに憎まれ口を叩いていても、
なぜかハノンだけはやるのです。
親としては、
「ああ、この子はまだ、ピアノを完全に辞めたいわけではないのかもしれない」
そんなことを、毎朝その音を聴きながら思っていました。
本当なら、
実技試験の曲や、コンクール曲も、
もっとしっかり取り組んでほしい。
でも、その時の私は、
ここで何かを求めすぎてしまったら、
この子は
「ピアノから逃げられない」
そんな気持ちを抱いてしまうのではないか…
そんなことを心配していました。
だから、本当に何も言えませんでした。
私は、子どものピアノのフォローをする時間が、好きでした。
一緒に演奏会へ行ったこと。
ショパンのCDを大量に買って、
「パパには内緒ね🤫」と盛り上がったこと。
コンクール遠征で、
石川、大阪、京都へ行ったこと。
普通の旅行より、
ピアノの遠征の方が多かったけれど、
大変な分、楽しい思い出も沢山ありました。
だからこそ、
学校から帰ってぐったりしている姿を見ながら、
「もしかしたら、このままピアノを辞めるのかな」
そんなことが頭をよぎる日もありました。
それでも、
毎朝積み重ねていたハノンと基礎練習。
そして、実技試験とコンクール本番を迎えました。
コンクール当日、
私は息子に、
「今日は、素敵なホールで、
思い切り音楽を楽しんでおいで」
そう伝えました。
もちろん、本番ですから、
出来る限り良い演奏をしてほしい気持ちはあります。
でも今回は、
“ここまで辿り着けた”
そのこと自体が、とても大きく感じていました。
思うように練習できない日々の中でも、
完全にピアノから離れず、
毎朝少しずつ積み重ねてきたこと。
だからこそ、
まずは舞台で、
のびのび音楽を出来たらいいな、
そんな気持ちで送り出しました。
結果は、2位。
本人は、
初めて賞をもらった時のようにはしゃぐこともなく、
ただ、少しほっとしたような表情をしていました。
後日、こんなことを言っていました。
「なんで2位だったんだろう。
練習も思うように出来なかったし、
絶対勝ちたいって感じでもなかった。
でも、本番で変な緊張しなかったんだよね。
全部、自分でコントロール出来た感じがした」
ああ、そんなふうに感じていたんだなぁ、と。
何度も本番を経験した曲だったこと。
毎朝、基礎を積み重ねていたこと。
長い時間をかけて向き合ってきた曲だったこと。
色々あると思います。
でも、一番は、
今まで積み重ねてきた時間と、
本人の中に残っていた
“音楽が好き”
という気持ちだったのかな、と。
この言葉は、
もう少しだけ、私の中に仕舞っておきます。