2025.10.15
最近のレッスンで、改めて感じることがあります。
「たくさん練習しているのに、なぜか伸びない」という子が少なくありません。
実は、その原因の多くが――**“考えずに弾いている”**ことにあります。
練習をしていて「できない箇所」に出会ったとき、
私は必ず、「なぜできないのか」を言葉にしてみます。
文章化することで、思考が整理されます。
そして、「無意識」に任せていた指の動きが、初めて「意識の光」に照らされるのです。
ピアノを弾くとき、つい自転車のように、指が勝手に動いてしまうことがあります。
その“自動運転”の中に、実は多くの「小さなズレ」が潜んでいます。
それを「今はたまたま」「本番では大丈夫」と見逃してしまうと、
そのズレが“習慣”になり、音楽そのものに染み込んでしまうのです。
そして気づくのは――本番の直前。
多くの人が、そこで初めてその存在に気づきます。
練習とは、**「考える質」と「考える量」**で、その効率がまるで変わります。
たとえば指づかいひとつにしても、
「どうしてこの指づかいなのか」を理解しているかどうかで、
手の動きは驚くほど変わります。
理由が明確な指づかいは、音の流れを自然に導き、
身体全体が無駄なく連動し始めるのです。
ただ……考えることには、ひとつだけ難点があります。
それは「面倒くさい」ということ。
でも、その“面倒”の中にこそ、
真の上達への扉が隠されています。
考えながら弾くことで、音が変わり、表情が変わり、
やがて「自分の音楽」が生まれていく――
その瞬間を知ってしまうと、もう戻れません。
🌙
今日も、音と対話する時間を大切に。