2018.12.11
私は音楽演奏の中で最も大切なことは、常に“cantabile”に演奏することだと感じています。なぜなら、歌うように演奏することは音楽に流れを作るからです。この歌うように演奏することは簡単のように思えますが、非常に難しいことなのです。
歌うようにとは何を歌うようになのかを考えることが必要です。それは簡単に言えば、その作品のテーマとなっている音楽です。その作品全体のテーマ、楽章ごとのテーマ、フレージングごとのテーマなどのすべてを感じることが大切です。そして、全体のテーマにそって、フレージングごとのテーマなどを融合させながら音楽を奏でるのです。もちろん、1つのフレージング中に複数のテーマとなる音楽があることがあります。そのときは1つの核となるテーマの音楽を、他のテーマのものを感じながら、歌っていきます。そのようなことがしっかりとできたときに、音楽に流れが生まれるのです。
音楽家の中には音楽をとにかく速く演奏することで、音楽の流れを作ろうとする方々がいます。様々な考えはあるのですが、私はその速度を速めて演奏し、流れを生むという考え方には反対です。なぜなら、それは音楽を間違った方向に導く恐れがあるからです。例えば、速度を遅く演奏しなければならないとき、音楽の流れを生むことが難しいでしょう。音楽の流れを作りたいという理由で、その音楽を速く演奏してしまってはすべてが台無しになってしまいます。私は音楽の流れというのは音楽の速度と関係のないところに存在すると考えています。音楽の速度は音楽の表現方法の1つと考えています。
音楽の流れを作るのはテーマとなる音楽をcantabileに演奏することにあり、それにより音楽に息吹を与えるのだとい思います。