2020.08.27
ピアノの音の立ち上がりには、非常に強いノイズが発生するそうです。打鍵した瞬間は、実はただの雑音しか出ていなくて、やや経ってから、音の波形は安定します。豊かな〈倍音〉を伴った熟成した〈楽音〉になり、音が安定するほんの一瞬を待てずに音を出すと、ノイズとノイズがぶつかって、汚い音となってしまう。だから、ペダルを踏むタイミングもとても難しく、指の打鍵と一緒に踏んでしまっても、雑音を響かせる事になってしまうので、打鍵後のキレイな音を確認してペダルを踏まなければならない。『かつて存在した最も敏感な耳』と作曲家《メシアン》に賞賛された《ラヴェル》は、普通の人には聴こえないような〈倍音〉が聴こえていて、楽譜に書いてある音をただ弾くだけでは分からない、その作品の秘密を知る事ができた。モーツァルトの音楽があんなにも流麗なのは、楽譜の指示を守れば、おのずと聴こえてくるはずの〈倍音〉のバランスが絶妙だからと言われています。時々、1つの音を打鍵して、ずーっと、その音を追ってみて下さい。キレイな〈倍音〉が聴こえてきて、音が伸びていくと、色々な音に変化していく事を発見出来ます。腕の良い調律師は、この〈倍音〉をキレイに鳴らせ、音の絶妙な唸りを発生させた味わい深い音を調整してくれます。その耳はヨーロッパの音環境から培われたもので、音楽家も留学したくなるのです。我が家の調律師もヨーロッパ仕込みなので、是非違いを感じてレベルアップに活用して欲しいです。