2016.09.01
彼女は泣いていました。
弾いても弾いても
まだ追いつかない。
途方に暮れて
泣きながら弾いていました。
彼は行きました。
4年間かけてバイトして、やっと手に入れた
KAWAIのピアノを連れて。
大都会に旅立って行きました。
社会人一年生ではきっと思うように弾く時間はないでしょう。
不安と共に行きました。
あの人は来ました。
疲れて重くなった体と共に。
きっと心にも重い荷物を抱いている。
仲間があの人の伴奏を待っている事を知っているから。
無理しなくていいよって、
何度も伝えようとしましたが、言ってあげる事が出来ませんでした。
私があの人の演奏を
誰よりも
待ちわびていたからです。
あの子は怒っていました。
妹はママと遊んでいられるのに
自分だけが頑張らされているようで
もうイヤだと怒っていました。
いつもいつもラッキーデーとは限りません。
いつもいつも感動してばかりとも限りません。
例えばそんな、あなたが土砂降りのような日でも
やっぱり一緒にいたいと思います。
そして
私の土砂降りの日に
一緒にいてくれたあなた。
ありがとう。