2019.05.28
右手が使えなくなり
左手だけでピアノを演奏する、
『舘野泉のコンサート』を
南相馬市で聴いた。
舘野泉さんは
震災以来
南相馬市文化センターの館長となり
音楽で被災者を助けてくれている。
バイオリニストである息子さんがコンサートマスターをしている
フィンランド🇫🇮の合奏団とともに
左手のためのコンチェルトを演奏。
その曲は
九州の作曲家が舘野泉の為に作曲している最中に
熊本地震が発生したために
復興への祈りも込められているとのことだった。
あちこちに
人の優しさが詰まった曲のようだ。
演奏家が舞台に出てきて客席に向ける顔は
ちょっと微笑んで、という人。
あるいは、
しっかりした表情で、という人。
あるいは、
来てくれてありがとう、という表情の人。
それぞれだが、
舘野泉さんは・・・
これ以上の笑顔にはなれないだろうと思われるほど、
顔から温かさが次々にこぼれ落ちている。
そんなお顔でピアノの前に立たれている。
気持ちが、お客さんと同じ位置に立ち、
これから演奏するという気負いが全く感じられない。
ここが演奏会場という事すら
聴く側に忘れさせてしまう。
そして始まった演奏。
初めは、左手で演奏しているのだなあという思いで
聴いていたけれど
いつのまにか
左手とか両手とかで弾いているなどということは
まるで忘れていて、
演奏にすっぽり入ってしまっていた。
そこには
舘野泉さんがいるのみ。
しかし、
先程の神様のような笑顔はどこにも無く
全身全霊、
音楽と向き合う舘野泉の音楽が
一瞬の隙もなく繰り広げられていった。
いつのまにか
会場全体が
幸福感に満たされていた。
それからもうひとつ。
3年に1度という『仙台国際コンクール』
中国、韓国、アメリカ、ヨーロッパ、ロシア、そして日本人。
年齢は10代〜20代。
テープ審査を通過した36人の若きピアニスト達。
1人40分のプログラムを組んで演奏する。
ここから
セミファイナルに12人が残り、
ファイナルに6人。
今日は36人が演奏する予選の3日目。
圧巻だった。
技術はどのピアニストも機械のように
凄い!
違っているのは
音色と
曲の解釈かなと感じた。
それでも、それでも、
ピアノに向かって弾き出すまでの
言葉にならないほどの緊張は
どのピアニストも同じだった。
余裕のある人など
居なかった。
鍵盤を何度も拭き、
手を拭き、
椅子の高さを気にして、
覚悟を決めて弾き出す。
コンクールという独特の雰囲気を
味わってきた。
今日までの緻密な練習と
当日の朝から本番までの時間。
そして迎えた本番の40分。
どの場面を切り取っても
凄まじい自分との戦いだったことだろう。
聴いていて、
きっと入賞はしないだろうけれど
もう一度聴いてみたいなという演奏があった。
きっと入賞するだろうと思われる
何もかも目を見張る演奏にも出会えた。
今週は
82歳の巨匠の演奏と20歳前後の若き演奏を
時を近くして聴くことができた。
共通するものが残ったような気がする。
それは
ピアノに対して
音に対して
どの方も、
とても、とても謙虚であったと感じた。
今週は
いい演奏に出会えました。
演奏会、
また行ってみよう❣️