心に残るエピソード5 『第2回 家の練習は電子ピアノだけれど!』
2016.07.22
~レッスンの宝物~ 心に残る、生徒さんとのエピソード 5
「自慢の生徒、H君~家では電子ピアノなのに?・・・・」
♪第2回 家の練習は電子ピアノだけれど!♪
プリマヴェーラピアノ教室の木村由紀子です。
今回は、レッスンの様子を書きたいと思います。
私は、H君の家が電子ピアノだとは知っていましたが
彼以外の他の生徒さんは本物のピアノだったこともあり
あまり彼を特別扱いすることなく同じ様に教えていて
何の問題もありませんでした。
むしろ
きちんと教えたことを人一倍頑張って
実行してくれていました。
それは
彼が家での楽器による弾きにくさなど
一切口にしなかったからです。
その様に接してきて、小学5年で
「エリーゼの為に」を練習している時のことです。
出だしのメロディーの
左右のアーティキュレーションの違いにより
つまり
右がフレーズの終わりの音でも左は始まりの音
その1音ずつを同時に弾く時に
大きなフレーズを考えて
バランスをとらなければいけないのです。
それが出来ないと
小さな塊が出来てとぎれとぎれになります。
その結果
大きなフレーズ感が出せなくなり
美しく弾くことができません。
ミレミレミシレドラのラの音と左の出だしの音の
微妙なバランスのことです。
彼は、まるで
CDを聴いてきたかの様に絶妙な左右のバランスで
大きなフレーズを作り上げたのです。
あまりに美しすぎたので、
「CDをまねて弾いているの?」と尋ねると
「僕んちにはピアノのCDなんかないよ」と答えました。
「じゃ、どうしてこんな素敵な演奏が出来るの?」
と、私が尋ねると
「自分の家では出したい音色は出ないけれど
先生の所で練習したタッチで
その音色を出しているつもりで弾くんだよ」
と彼は、言っていました。
彼のことがきっかけとなり
「ピアノはアコースティックでないと良い音色を作ったり
人を感動させる様な表現をしたりすることは出来ないと」
と、よく言われますが
それからというもの
私は住宅事情で本物のピアノで練習できない生徒さんにも
レッスンの際は
「電子ピアノだから仕方がない」と云う諦め的妥協は
一切しないように心がけています。
幸い、今までの生徒さん達は何の問題もなく
グランドピアノのタッチをマスターしてくれています。
次回は、H君の人柄を表すエピソードを書きたいと思います。