2025.11.17
2025年11月14日(金)レゾナンスにて、
開催された第137回ちば・市川バスティン研究会では、ショパン国際ピアノコンクール・ファイナリストの根津理恵子先生をお迎えして「ショパンセミナー」が開かれました。学びが溢れていた今回のレポートを私が書かせていただきました。
理恵子先生の大人気企画が始まったのは2021年。
今回で5回目を迎え、会場には期待と熱気が満ちていました。
そして、手元・足元・全体の動きを3台のカメラで映し出してくださったのは、お父様である昭義先生。スクリーンに映し出される映像のおかげで、細部まで非常に理解しやすく、大変ありがたい環境となりました。
これまでのセミナーでは、マズルカ・ワルツの魅力、ポロネーズ、ショパン作品の演奏ポイント、ワルツのレクチャーなど、多彩なテーマが取り上げられてきました。
そして今年は、
ショパンを“自然に、美しく”弾くための具体的なポイントにフォーカスしたレッスン形式の内容でした。
●前半:バス研メンバーへのアドバイスレッスン
O原先生・K野先生それぞれ30分の公開レッスンでは、理恵子先生の丁寧な実演と的確なアドバイスで、音が目に見えて変化。
音色・流れ・ニュアンスがどんどんショパンらしく変わっていく過程に、参加者全員が引き込まれました。
●後半:生徒さんの動画アドバイス
4名の生徒さんの演奏動画を拝見しながら、
理恵子先生が動画を止めて一つひとつポイント解説。
音楽的視点、体の使い方、練習方法などが非常に明快で、すぐレッスンに活かせる内容ばかりでした。
<今回扱われた作品>
1. エチュード Op.10-12「革命」
2. ワルツ14番 遺作
3. エチュード Op.10-1
4. 子犬のワルツ
5. エチュード Op.25-2
6. バラード1番
特に印象に残った学び
1)ショパン作品に潜む「複雑な感情」
「革命エチュード」と「ワルツ14番」が書かれたのは、ショパンが祖国に戻れなくなった時期。怒り・葛藤・情熱の奥に潜む“悲しみ”や“泣くような感情”をどこでどう表すか。また、「ワルツ14番」中間部の幸福感の描き方など、感情の“層”を捉えることが大切と教えていただきました。
2)ショパンのレガートは“指先の重さでつなぐ”
指先の重さを保ったまま、手首を上下に揺らさずに移動する。
一音一音“叩く”のでも、一音弾いただけで力が抜けるのでもなく、
指先の重みを乗せて手首をしなやかに移動させていくレガートが必要。
左手1指の重心移動は手首の方向が鍵になるというお話が印象的でした。
3)左手伴奏は水平に、淡々と
左手の伴奏はできるだけ水平移動、体の動きを最小限することで、右手がより自由に表情豊かになるというアドバイスはすぐに生徒へ伝えたいポイントでした。
4)長いフレーズでの手首の使い方
ショパンは長いフレーズが多いもの。
息継ぎではないところで手首を抜きすぎないこと。逆に息継ぎの部分ではしっかりと力を抜くと音楽が自然にまとまる、とても分かりやすい説明でした。
5)難所の効果的な練習法
・リズム練習も“機械的にならず、音楽の姿をイメージしながら”行う
・指の開閉運動を繰り返し、動きに慣れさせる
・楽譜を後ろから弾く練習も有効
どれも今日から試したくなる内容でした。
おわりに
今回も、根津理恵子先生のショパンへの深い愛情と、分かりやすく丁寧なご指導に、参加者全員がたくさんの学びを得たセミナーでした。
この貴重な機会を作ってくださった根津栄子先生、そしてバス研の先生方に心より感謝申し上げます。
またぜひ開催していただけることを楽しみにしております。