2024.02.20
有る著名なヴァイオリニストが音大生に向けての講演で
「プロの演奏家になりたいなら、まず自分が弾きたい曲は弾かない!」と言われ、
唖然ーー。何て可哀想な人なのだろうと。
この方にとって演奏する事は、仕事で有り、お金を稼ぐ手段。
1枚でも多くコンサートのチケットを売りたい。
その為には、チケットが売れる曲を弾く――と言う事なのでしょう。
確かに一理有るのでしょうが、私は暗澹たる気持ちになりました。
しかしこの選曲問題は講師演奏会等でも事務方から度々提起され
「生徒さんや保護者が知っている、馴染みの有る曲を弾いて貰えないか?」
つまり、チケットが売れる曲を演奏して欲しいとの要望な訳ですが、
先生方は
「自分が弾きたい曲を弾きたい。
今、勉強している曲を弾きたい。
それが弾けないなら、演奏会には出ない!」と一蹴。
当然です。
何故なら、出演料はゼロ。
逆に演奏会に出られる先生方には、多額のチケットノルマが課されていたのですから。
その後、雀の涙程の出演料が出る様になりましたが、ノルマはその数倍。
ですから、先生方がご自分の為に演奏したいと言われるのは当然なのです。
ただ最近、コンサートのプログラムを見ると
又この曲?又この曲?と(-"-)
これが時代の流れなのかとーー。
ところが先日、世界のトップ集団を走る25歳の若きピアニスト藤田真央さんがテレビのインタビューに
「音楽を学ぶ事以上に幸せな事はないのですか?」との質問に
「私の場合、コンサートの為にやっているものではない。
そうなると仕事になっちゃう。
それは、日々生きて行く上でお金を稼ぐ手段になってしまう。
そう思いたくない。
音楽は自分の為にやっている。
だから長時間の練習も苦じゃない。
私は、音楽と共に生きて行きたい。」と
藤田さんは
「好きで始めた事もお金の為、誰かの為にだと義務になってしまう。
そして苦しくなる。
好きだと思った初心を忘れない。
それが毎日を幸せに生きる為の秘訣」と。
終始穏やかに、微笑みながら、
しかし、毅然とした強い意志と覚悟を持って話されていました。
勿論、小中学生や勉強中の時期には自分の弾きたい曲の為のテクニックの練習や苦手な曲種も練習し、曲の食わず嫌いを起こさない様に先生からの指示に沿う事も大切です。
しかし、音楽は自分自身の幸せの為に有るのです。