2014.11.03
銃殺された人間の肉体が目の前にある。
それが、とっさに感じたことでした。
ジャン・フォートリエ。
20世紀を代表するフランスの画家、アンフォルメルの創始者。
初期の作品からして強烈な印象を受けました。
主題として取り上げられている人物は管理人、娼婦、道化。いずれも市井の末端の、蔑まれている階層の人々です。
黒や濁った緑の暗い色調、しかし、筆致は力強く、同情や共感などという生優しいものでは表現できない、確かな存在感が見るものへ突き刺さってきます。
グロテスクなものもありました。
皮を剥がれた羊の頭部、つり下げられたウサギ。
いずれも静物画の古典的な主題であるにも関わらず思わず、目を背けたくなるようなリアルさにギョッとさせられます。
でも、醜いかと問われれば、むしろ美しい。
衝撃的なだったのが『人質 Otage』と題された一連の作品でした。
これらはナチスのパリ占領中、ゲシュタポの追尾を逃れパリ近郊へと隠れ住んだ時期に製作されたもの。
それは囚われた人々の顔。
私の目の前にあったもの、それは絵ではなく人そのもの。
私は彼らひとりびとりに対峙し、その証言を聞きました。
そのあまりの重さにしばし言葉を失いました。
うってかわって戦後の作品。
その穏やかな白。
温かな雨のしずく、草の緑、ジャズの響き。
2つの大戦を経験したジャン・フォートリエ。
彼の作品には20世紀の歴史が刻印されています。
芸術とは人そのもの。
美しいもの、心地よいもの、それだけが芸術では無いと思っています。
ジャン・フォートリエ展
国立国際美術館(大阪ー中之島)にて
2014年12月7日まで