2013.09.29
初めてバロック音楽(バッハ、ヘンデル)に触れる生徒さんには次の三つの言葉の説明をすることにしています。
モノフォニー
ポリフォニー
ホモフォニー
これらはすべて音楽の様式を表す言葉なのですが、順番に紐解いていきましょう。
人間が音楽を始めた、その最初の時はどんなだったのでしょう。
きっと気持ちが動いた時に、言葉に大きく抑揚を付けて、それを長く引き延ばして、、、それが次第に
歌になっていった?
そういえば、昔見た番組で、気持ちが高ぶるとそれを即興の歌にする伝統を
持った山岳民族の取材をしていました。素敵ですよね。
そんな風にして、ひとりの歌が、やがて村の共通の歌になり、
皆で一つのメロ
ディを歌う。これが
モノフォニー。単一(mono:ギリシャ語)の旋律を全員で奏でます。なんとヨーロッパでは
グレゴリオ聖歌というお経が、このモノフォニーの形式で何百年も歌われ続けたんですよ。
紀元後900年頃、その単旋律の世界に、新しい世界が広がり始めます。
旋律に、
高さの違うある音を加えると、何やら世にも美しい響きがすることに
気がつき始めるのですね。
そして、沢山の試行錯誤のすえ、二声、三声、四声、、、、と
異なる旋律を重ねる。そう、まるで数種類の異なる糸で複雑に編み込まれた敷物のような、見事な音楽世界が創造されるようになります。
これが
ポリフォニー。複数(poli:ギリシャ語)の旋律を組み合わせて奏です。
かの有名な
J.S.バッハ。彼こそがこのポリフォニー音楽の技法の全てに精通し、
まとめ上げ、頂点を極めた作曲家でした。
ただし、彼の成し遂げたポリフォニー音楽の完成は、同時にまた新しい世界の始まりでもあったのです。
J.S.バッハの死(1750年)とともに、また新たな音楽の形式が広がり始めます。
それが
ホモフォニー。
それまでも、一定の音程間隔で音を積み上げると見事に調和する響きが鳴ること、そして、それをある規則に従って配列していくと何やらすっきりと音楽が進行することが知られていたのですが、それを整理して
一つのメインになるメロディ、それを支えるハーモニーと言う形式が定着していきます。
古典派の到来ですね!
それは、時にはゴツゴツといびつに複雑に絡み合っていた
バロックの音楽を聞いてきた人々に、
伸びやかな歌と調和に満ちたハーモニーの喜びを持ってきたのではないでしょうか?
実はこの頃、社会も大きく変わろうとしていました。啓蒙思想が広がり、それまでの貴族社会から市民社会へと移行しつつあったのです。
実は
ホモフォニーのホモ(homo:ラテン語)と言う言葉、『人間』という意味なんですね。市民社会の広がりとともに広まった『人間』の音。
ちょっと感動的ですよね。
おっと、三つの言葉の説明をしようとしたところ、思わず音楽の歴史まで話しが飛んでしまいました。この続きも書きたいところですが、長くなりましたので、今日はひとまずここで筆をおくとしましょう。