2013.09.21
久しぶりのブログ更新となりました。
9月前半は、コンメディア・デッラルテのワークショップの研究発表会、ついで東京にてチェンバロのマスターコースへの参加、と落ち着かないながらも色濃い毎日を過ごし、ようやく日常生活が戻ってきたところです。
今日はそのチェンバロのマスターコースのお話をしたいと思います。
講師は
ロベール・コーネン先生。
御年81歳だとか!私が最も敬愛する音楽家です。
今回は、公開レッスンだけではなく、氏の若い頃のお話も聞けました。
実は
チェンバロという楽器、今でこそ演奏会でも普通に見かけるようになりましたが、一時は
忘れられた楽器だったのですね。
それもそんな昔の話では無いんですよ。
ピアニストの
ワンダ・ランドフスカ(Wanda Landowsk)氏がモダン・チェンバロを設計・演奏したのが約100年前。でも、それはモダンと称されることからも分かるように、16・17世紀つまりチェンバロ全盛期に使われていた楽器とは随分異なるものでした。乱暴な言い方ですが、ピアノ風チェンバロ、とでも申しましょ
うか。
ですから、コーネン先生がチェンバロに興味を持った頃も、使える楽器と言えばモダン・チェンバロ。バロック時代に使われていた様式のチェンバロ(歴史チェンバロ)は博物館でこそ目に出来るものの、とても弾ける状態には調整されていなかったとか。
楽譜もしかりで、アンサンブルの楽譜などはやはり図書館のマイクロフィルムしかなく、なんとマイクロフィルムを投影しながら演奏したこともあったとか。
ほんの5・60年前のお話。
まさに、古楽界のパイオニア。私達が今、バロック、ルネサンスの音楽を身近に楽しめるのは彼等の活躍のたまものと言えましょう。
のみならず、私がコーネン先生を尊敬するのは、何にもまして彼の大きな人柄によります。
彼はレッスン中さほど細かく指摘するわけではないのですが、彼の全身から発する音楽にふれているうちに、
自然な息づかいで、自由に音楽が羽ばたき出すのです。
とくにアンサンブルのレッスンでそれを目の当たりにしたのですが、
氏がチェンバロを担当しただけで、がらりと音楽が変わってしまう。
ここまで、変わるものか、、、マジック?と思ったほどでした。
人の力、音楽の力って、凄いですね。
微力ながらも、なんとか、彼から受け取ったものを伝えていけないものかと思っています。