2024.11.07
みなさんはバルトルド・クイケンをご存知ですか?
バロック時代のフルート(フラウト・トラヴェルソ)の草分け中の草分け。60年代からの古楽復興を担ってきた著名なフルート奏者です。先日、彼のマスタークラスがあるというので聴きに行ってまいりました。
経験と研究に裏打ちされた一言ひとことに説得力があったのですが、中でも印象的だったのが次の一言。
『音楽をするには言語を勉強しなくてはいけないですよ。
これに関しては「言い訳なしです(no excuse)」』
音楽と言語の関係については、彼以外の演奏家も言っていた事なのですが
今回聞いたバルトルドさんの体験には改めて深く考えさせられました。
彼は若い時、日本人の作曲したフルートの曲が大好きで演奏していたと。
でもある時、日本の文化と言語、尺八の音色と奏法を知る機会があり、
その(西欧の文化との)あまりの違いに驚き、もうその曲は演奏しないことにしたんだと。
いくら完璧に楽譜の音をなぞったとしても、その曲の生まれた文化を理解していなければ、それはイミテーションでしかない、(自分にはそれができていない)と考えてその曲を封印したのだと思います。そして言語こそが、まさに文化の根幹にあるものだと。
私たちは現代、西欧風の服を着て、洋食を日常的に食べ、椅子やベッドのある家に住んでいます。だとしても日本語で思考する限り、日本の文化の囲いからは逃れられない。その私が違った文化圏の音楽をすることの難しさ。これは、なかなか根性のいることではあります。
でもガッカリしてばかりいても仕方がないですからね。
外国語を勉強することは、まさに未知の世界、思考の世界に足を踏み入れることだと思うのですね。そして外の世界を知っているからこそ、日本人としてのアイデンティティが強みになっていくのだとも。
音楽と言語は不可欠の関係。
「言い訳なし」で頑張ります!