2019.10.01
先日、展覧会「ウィーン・モダン〜クリムト、シーレ、世紀末への道(国立国際美術館)」へ行ってまいりました。
実は展覧会の内容をよく調べもせず「クリムトの絵が来てるのか」という位の興味で行ったんですね。
それは18世紀、女帝マリア・テレジアの啓蒙時代から19世紀「世紀末芸術」まで、およそ150年間のウィーンの街の変遷をたどる内容で、美術と歴史、両面から興味深いものでした。
その中で、ある一枚の絵の前で足が止まりました。
友人たちの集うサロンで、まさに今シューベルトが新作曲を披露し終わって「さあ、どうだい?」とばかりに此方を振り向いた有名な絵です。
思いの外大きな絵。
等身大のサロン客たちが身を乗り出して拍手をし、横の友人と目線を交わす。
肩肘の張らない親密な雰囲気、画面からは口々に褒めそやす囁きまで聞こえてきそうです。
シューベルトの顔に引き込まれました。
想像していたよりもずっと若々しくて、、、当たり前といえばそう。彼は31歳で亡くなっているのでした。この時はまだ20代でしょうか。
血色の良い丸顔に、洒落た銀の細縁の眼鏡。眼鏡の奥の眼差しは笑っているように見えます。
絵の隣にその眼鏡が展示されていました。
亀裂の入ったレンズ、くすんだ銀縁。
でもその古びたオブジェが、絵画の人物の紛れもなく実在していたことを語っていました。
この時代、ビーダーマイアーと言うのだそうです。
ナポレオン戦争が終わり、世に秩序を取り戻そうとしていた、と言えば聞こえが良いようですが、要はメッテルニヒによる「官憲による監視社会」が広がり、政治や国際情勢への発言が抑圧されていた時代。
人々は、理想や哲学を語るよりも、身の回りの細々した日常生活に目を向け、
日々の居心地の良さを愉しんでいた。
唇開けば寒し。
無理して闘うより、今より悪くならなければ、それで良いさ。
まるで、どこかの時代のどこかの国に似通っているような、、、。
そんな事を感じながら会場をへ巡ったのでした。