2018.04.17
この春には二つのマスタークラスを聴講する機会がありました。
一つは前回ご紹介したフランス音楽アカデミー、
そしてもう一つが、今回お話しするフランス人チェンバリスト ロール・モラビト氏のものです。
実は、フランス・バロックは昨年の夏にイタリアの講習会で勉強してきたところで
お腹いっぱい、暫くはよいか〜。という気分だったのですが、
大阪でのマスタークラスの機会は貴重ですし
それに、フランス語に慣れたいという下心もあって、
では、とこれまたピクニック気分で出かけたのでした。
人のレッスンを聴いていて楽しいのか?と問われれば
これが、なかなかどうして
結構な集中力を要するのです。
勝手知ったる曲もあれば、初めて耳にする曲もあり
楽譜もあったり なかったりで、
まずは生徒さんの弾く音に集中!
曲の雰囲気をつかんだら、
次は先生のアドバイスに耳をそばだてます。
言葉の壁やその先生独特の表現に戸惑って、ハテ、これはどういう事かしらん?なんてことも。
そして、演奏がどう変わっていくか、その変化を自分の耳が正確に捉えられるか。
これは自分の耳を試されているようで、こちらも緊張します。
まさに聴講とは、聞く聞く聞く、の作業の連続。
疲れるわけです。
今回はそのマスタークラスの合間にワークショップが設けられていました。
ワークショップといっても、課題を皆でこなすわけではなく
装飾方やイネガリテ(フランス音楽独特のリズムの不均等な演奏法)についての
意見交換の場で、だれでも自由に質問や意見を述べられるという時間でした。
モラビト先生や、トラヴェルト奏者で通訳者の折井あきつさんが話の流れを作りつつも、
それは授業とはまた違った、とてもフラットな雰囲気で
一つの質問から話題が広がり、また次の質問へと繋がっていくというスタイルでした。
モラビト先生はご自身の知識や見解を余さず語ってくださる一方
よく分からない事には分からないと、率直なお返事。
興味は尽きる事がなく、時間を忘れるようでした。
その中で、繰り返しモラビト先生が語られたことに《良い趣味(bon goût》があります。
これは、正確に説明しようとすると本が一冊書けるほどの内容になるのですが
たくさんの文献にあたって、当時どんな奏法がおこなわれていたかを知る事は大事ですが
最後、どうするかは奏者の《良い趣味(bon goût》に委ねられていますよ、と。
つまり最後は、あなたが《美しい》と感じるものに従いなさい、と。
そう私は理解していますが、まあ、自分の感性に委ねられる怖さといったら。
それでも私は、人には時代や言葉を超えて共感しあえるものがある。
そして、自分が心底《美しい》と思ったやり方でしか、
本物の表現はできないと信じて
今日もつらつら、鍵盤に向かっております。
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